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「でも、菱沼くんに出会って、救われた」
ついに伸ばされた手は、俺の頬に触れた。
「ねぇ、菱沼くん…」
その目は、俺は今まで一度も見たことがない。
愛おしさで溢れていた。
あぁ…だめだ。
そんな目を向けられたら…
「っ……俺、藍野先輩のことが好きですっ…」
もっと、色々な言葉を考えていたのに、出て来たのはそんな言葉で、
「好きです…好きなんです…先輩には、ずっと、心から笑ってて欲しいです」
「…ありがとう」
先輩はとびきりの笑顔で笑ってくれた。
そして、
「俺も、菱沼くんのことが好きだよ。俺に、笑うことを思い出させてくれてありがとう」
「っ…せんぱ…もう、っずるい…っうぅ〜」
「あははっ…泣かないでよ」
ぽろぽろと涙がこぼれていく。
そんな俺の腕を引いて、先輩は優しく抱き締めてくれた。
「無茶言わないでください…」
こぼれる涙を、全然止められない。
「でも、ほら…そろそろ寮長が鍵を締めに来ちゃうから…」
「っ…」
そうだった。
前にもここで会っているから、変に思われてしまうかもしれない。
「部屋まで送るね」
「っ」
「ふっ」
コクリと頷くと、先輩は笑った。
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