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「菫玲先輩?」
菫玲先輩が俺のクラスを訪ねて来たのは初めてだった。
「ちょっと来て」
「あ、はい」
先輩が向かったのは中庭の裏手の方だった。
あることが脳裏を過る。
「…どうしたんですか?」
「ぜんぶ思い出しちゃった」
「っ…!!菫玲先輩っ…」
その言葉だけで、全てを理解した。
「ねぇ、菱沼くん、僕ね、直くんのこと好きなの思い出しちゃった…」
「あ、の…」
うまく言葉が出てこない。
こんな日が来るかもしれないと考えてた。
でも、いざ目の前にすると、何を言えばいいのか、分からない。
菫玲先輩は、直澄先輩のことを"直くん"と呼んでいたのか、なんてどうでもいいことを思う。
次に来た言葉は、
「菱沼くん、直くんと別れてくれる?」
「っ…!」
覚悟していたつもりだった。
でも、一緒に過ごせば過ごすほど、離れたくなくて、想いは募っていくばかりで、手放す覚悟なんて全然できてなかったんだと、この状況になって自覚した。
「泣かないでよ…泣きたいのは僕だよ?思い出したら、直くんは僕の元にいなくて、僕には桐哉がいる。桐哉のことだって、嫌いになったわけじゃない。でも、僕の心は直くんを求めてる。
それに菱沼くんのさっきの反応。僕が直くんと付き合ってたの知ってるんだよね、しかも、それを忘れてたことも」
いつの間にか涙が頬を伝っていた。
「っ…」
その通りだ。
全て知っていた。
「ふ、古瀬先輩には…」
「まだ話してない。桐哉は、記憶のない僕に優しくしてくれた人だから、好きな気持ちは無くなってはない。でも、直くんのことが僕は好きなの」
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