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「記憶を…?」
その先を菫玲先輩は紡がず、俺を再び見た。
「どうする?全部話す?今僕たちは付き合っていないってことと、僕には相手がいるってことだけは最低限のことかなって伝えたけど、もっと詳しく話す?」
「それを、俺が決めていいんですか?」
「待って。どうして、俺と菫玲は別れたのか聞いても?…今の俺は菫玲のことがす」
そこで菫玲先輩は人差し指と中指の先で、直澄先輩の口を押さえた。
「その言葉はもう聞けないし、菱沼くんに聞かせたくない」
「灰凌くんに…?」
パッと俺の方を直澄先輩が見て、収まっていた涙が溢れそうになって、顔を逸らして目元を拭った。
「どういうこと…?」
「どうする?菱沼くん」
「…話しても、思い出せないかもしれないけど、話すことにします」
「そっか。それじゃ僕は帰るね?何かあったら連絡して。僕にできることは何でもするから」
「ありがとうございます…」
「じゃあまたね。あ…藍野くん、ちゃんと菱沼くんの話聞いてね?」
「ちょっ、菫玲…」
それだけ言って、菫玲先輩は病室を出て行った。
「…えっと、どういうこと?」
困ったように、直澄先輩は俺を見つめる。
「今から話すことは、信じられないかもしれないけど本当のことです。もし全部聞いて俺のことが信じられないなら、菫玲先輩にも聞いてください」
そして、俺は直澄先輩と出会う前、2人が交通事故に遭って、菫玲先輩が直澄先輩のことを忘れてしまったことから話し始めた。
俺の言葉を、直澄先輩は戸惑いながらも最後までちゃんと聞いてくれた。
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