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「俺と灰凌くんが…」
「…信じられないですよね」
「う、ん…。でも、この数週間一緒に居て、記憶を失う前の俺が、灰凌くんのことを好きになったことは納得できるよ」
その言葉だけで、嬉しかった。
「でも、まだ整理できない。俺の中の記憶は、君たちでいう二年前のままだから。菫玲に相手がいて、俺にも灰凌くんがいると分かっても…」
「仕方ないと思います…でも、俺はずっと直澄先輩のことが好きです」
「ありがとう」
直澄先輩は笑ってくれた。
「あの、俺もうすぐ退院なんですけど、退院してからも、会いに来ていいですか?」
「もちろん」
「ありがとうございます」
そして俺は数日後、退院した。
「藍野先輩の調子はどう?」
「リハビリも順調みたいで、もう少しで退院出来るって」
「いや、まぁそれもなんだけど、そうじゃなくて…」
「え?あぁ、記憶は戻ってないよ」
「話したんだよね?」
「うん、全部話したよ」
話したからと言って当然、すぐに思い出すわけもなく、今はただの先輩と後輩の関係だ。
触れられないのは辛い。
抱きしめられたいし、キスだってしたい。
でもそれは許されないから、我慢するしかない。
「どうしたら思い出してくれるかな…」
「菫玲先輩はどうして思い出したんだろうね?」
「…聞いてみようかな」
自分に出来ることは何でもやりたい。
後悔しないために。
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