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最悪の再会?
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「はぁ...。」
少しだけ吐いたはずの息が、疲れ切ったようなため息となってあたりに響いた。
今日も人が群がる満員電車。
春の訪れに合わせてこもる汗ばんだ空気。
オマケに首元に飾ったネクタイはやけに苦しい。
つきたくもないため息がまた空気に混ざる。
俺こと、咲原 凪流(さきはら なる)は早朝からごった返した電車に揺られ、今日も行きたくもない会社に足を運んでいた。
辛うじて座れた優先席に一応罪悪感を感じていたが、正直他人に優しい心を広げている余裕なんてなかった。
もう嫌になる、全てが。
軽い気持ちで入ってしまったあの会社は多分、いや絶対ブラック企業だ。
残業なんて当たり前。
遅い時は深夜までパソコンと向かい合う時だってある。
それにも関わらず、残業手当なんて言葉を知らないかのような超低額の給料。
お陰で切り詰めた食費に今日もお腹を鳴らしているのだ。
「...辞めたい...。」
行く宛がないから、辞める訳にもいかないが、あったら絶対辞めてやる。
くそ、今に見てろよ、部長(あのハゲオヤジ)。
「ククククッ...。」
ふと抑えたような笑い声が、上から降り注いできた。
その声の方へパッと顔を向けると、一人の男性が、自分の前で肩を揺らしていた。
?
「ふっ、随分と、苦労されてる、みたいですね。」
笑いに震えた声がまた自分に向かってくる。
え?俺?
待って、もしかして、さっきの声にでてた?
恥ずかしさに、顔の温度が一気に上昇するのがわかる。
「えっと...っ、あ、...。」
もごもごと口を動かして、真っ赤になりながら俺は俯く。
朝から最悪だ...。
下を向いて羞恥心に耐えていると、何やら棒みたいなものが、視界に入ってきた。
あれ、と思い、その棒に恐る恐る視点を合わせると、目に映ったは...白杖だった。
流石にそれを見て、優先席に呑気に座っていられるほど、神経は図太くない。
「っすいません!!席代わります!!」
慌てて腰を浮かせ上ずった声を上げた俺に、その人は吹き出しながら、杖を持ってない片手で、俺の行動を制した。
「ふはっはっはっ...!いいっていいってっ。」
その人の手に押されて戻された俺はおずおずと顔を上げた。
そして、まだ目を細めながら笑うその人の顔を見たその瞬間、
自分の息を呑んだ音が聞こえた。
心臓が跳ね上がって、ブワッと嫌な汗が吹き出す。
止まった息と思考の中で、確認する。
...アイツだ。
忘れたくても忘れられない。
俺の心に深く残された傷の主犯者で、
...高校時代、俺を虐め続けた最低最悪の人間。
間宮...、凛
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