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4.同僚
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うっすらと目を開けると、そこは真っ白い天井だった。視界の端には、点滴薬。窓から差し込む陽射しが眩しく、開けたばかりの目を思わず閉じてしまう。
そっか、おれ倒れたんだっけ…。
まだふわふわと揺れる記憶の中で、起こった出来事を整理していく。会社に行こうとして、それで、電車の中で…間宮 凛に会った。
嫌な寒気をかき消すように、被っていた布団に深く入り込む。
なぜあの電車に居たのか。数年間通勤は電車であったのに、今日まで1度も見かけたことなどなかったのだ。
いや、そうじゃない。そこじゃなくて、そう、
白杖。
今目が見えないのか。でないとあの杖なんか持たないよな。
しかも、雰囲気が高校時代とまるで違った。もはや別人のようだった。
あんなんじゃなかった。
もっと、もっと…っ。
また息がつまり、苦しげに胸を抑えた時、
ガラガラッ。
突如響いたドアの音にパッと体を持ち上げ、そっちを向く。
「おっ、凪流起きてんじゃん。」
ニッと笑って、傍にある椅子に腰掛けるそいつの正体は、俺の同僚の佐々木傑(ささきすぐる)だった。
「体調どうだ?お前ぶっ倒れたとか聞いたからさ、慌てて会社抜けてきたんだよ。って、やっぱ顔色悪いな、大丈夫か?」
そう言って、心配そうに俺の顔を覗き込み、額に手を当ててくる。
しかし、色々思い出したせいか、その手がなにかとてつもなく怖いものに見え、ビクッと肩を揺らすと、やんわりと避けた。
「っうん、大丈夫。ごめん、迷惑かけて…。」
時計の針は正午を指している。わざわざ昼休みに抜け出してきてくれたのだろうか。
「いいってことよ。とりあえずしっかり休めよ。凪流は毎日毎日頑張りすぎなんだよ。」
「…ありがと、傑。あの、大丈夫だから、えっと、もう会社行くね。」
申し訳なさに、俯きながらいうと、傑はわしゃわしゃと俺の頭を撫でながら盛大なため息を吐いて苦笑を浮かべた。
「凪流くんたらお話聞いてましたかいー?俺はゆっくり休めって言ったんだけど。とりあえず、明日まで休み取っといたからさ。心配だし送ってくよ。」
車で来てるし、と鍵をくるりと回しながら笑う傑に余計申し訳なくなる。
だが、正直もう、電車は当分使えなさそうだ…。そうなると今日は、
「ごめんね、傑。送って貰える??」
ぎゅっと布団を掴んで頼むと俺を安心させるようにその手を取られた。
「だからそう言ってるだろ。ほら行くぞ、起きれるか。」
呆れたように笑う傑にほっと息をついて、少ない荷物をまとめ、その背中を追った。
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