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桜咲く日
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その日、空を見上げると、優しそうな男の子がおれを抱き上げてくれた。
「おまえ、ひとりぼっちなのか?」
そう。
「可哀想に。寒かっただろ?」
この日から、おれはこの人に恋をした。
「腹、減っただろ?食えるか?」
背中をさすってくれる、温かい手。
優しく抱きしめてくれるその手が好きだった。
遊んでくれて、ご飯をくれる。
撫でてくれて、キスをもらった。
すき。
だいすき。
見上げると、微笑んでくれる。
その笑顔は、おれだけのもの。
男の子の家族も、みんな優しかった。
おれは、自分の居場所を見つけた。
ある日、体が熱くて燃えそうで。
震える体を擦り付けて、苦しさを訴えた。
「・・・発情期だね。」
その日、おれは知らない家に連れていかれて、だいすきな家族から引き離された。
悲しくてポロポロ泣いた。
体が熱くて、叫んだ。
眠って起きたら、熱が引いて下腹部に鈍い痛みが走った。
迎えに来てくれた家族とともに家に帰る。
その日から、ずっと毎晩、男の子と一緒に寝るようになった。
すき。
ずっと、すき。
だんだん家に帰って来なくなったけど、すき。
だいすき。
春の匂いを嗅ぐと、あの日を思い出す。
「クロたん、ただいま。」
おかえり。
すきだよ。
あの日みたいに動けないけれど。
ずっと、すき。
この命が燃え尽きるまで。
ずっと、ずっと、だいすきだよ。
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