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架空線1
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どうやっていたっけなぁ…
もう何度目かになる疑問を呟く。
声に出すことで僅かに解消するようにはなったが、問題が先送りされただけで解決などされてはいない、残念ながら。
別に、分からない訳ではないのだ。それ自体は脳内再生できる。付け加えて言うなら、一人でも同等の世話は出来るのだ。
思い出せないのは、どんな感じで “誘っていたか” だ。声をかけたという記憶が ない。
ヤらないか?
意志は伝わる筈…。
…しかしだ。
何を?
と言われたら、どうだ。
たちまち動揺してしまうだろう。
温度差に年甲斐もなく傷つき、情けなくて誤魔化してしまうかもしれない。
当たって砕けろ、とは もう考えもしない。保身的な自分を情けないとは思えなくなったからだろう。けれど、時間が解決してくれるものではない ということだけは残念ながらもう理解している。既に後手後手だ。
残業で就寝時間がずれる。休日が重ならない。出張が増え、部下が増え、家をあけ…。
せめて疲れた顔で仕事の愚痴は溢すまい と一人になる時間も設けた。
もう何年たったのだろう。
それが誤手だったと反省もし、リビングに居続ける手段として害の少ない電子タバコに変えた。
それで もうどれくらい過ごしてきたのか。
不満は無く、一つ屋根の下、何かと頼りにもする。一緒に居られる時間には飯も食うし話もする。俺達は充足した月日を過ごしてきたのだ。
少なくとも俺は、そう 感じていたはずだった のに─。
ヤりたい。
たったその一言が、素直に言えない。
軽薄な言葉があまりに重い。他愛もない話はするのに、欲求を解消する誘いが出来ないのだ。
日頃の笑みはけして嘘偽りなどではないがしかし、こんなことを考えた日には酷く寂しさを感じていた。
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