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架空線21
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まぁ、なんとなく予想はついていたが、結局のところ朝まで起きれなかった。
もうワンチャン は、互いに求めることすら出来なかったことになる。
とても一回戦だったとは思えないほどの全身疲労だ。まだ瞼が重たい。喉も痛い。ただ、頭だけは意外なほどスッキリとしていた。
目が覚めた時、寝た時と同じ位置に彼は居て、おまけに俺の手は捕らえていた。
マジか。
接触が行為に直結した…下半身に脳みそがあるような俺たちにとっては、身体の一部が絡むことはつまりセックスの一部だったのに、だ。
長い間適正な距離がわからなくなっていたのだろう。こんな風にただ手を繋いでいる というのは、記憶のどこにも無い。
しばらくして目覚めた彼は繋がった手に強弱をつけながら、こちらを見ていた。
彼も同じ事に気付いたのだろうか。
心地良さそうな表情で、手を指で撫でている。
まばらに出ている髭に白いものが混じっている。首筋に剃り残しの長い毛も見つけた。目尻の笑い皺が深くなっていて、首筋に日焼けではない肌の老化を目の当たりにした。
同じ家に住んでいたのに、こんなことにも気付かなかったんだな と思い息をつくと、それと全く同じタイミングで彼も息をついた。
お前の珈琲 飲みたいな。
そう言った後で、はたと思い出した。このワードをいつも口にしていたことを。
繋がった手が外され、一糸纏わぬ彼がベッドサイドに立ち上がった。
イテ イテテテ
一回り細くなったが、けして痩せたわけではなさそうだ。明らかな筋力の減少。彼はその場で腰をゆっくり回して、もう一度イテテテと声が洩れた。
若干前屈み、脇腹に肉のついたその身体で台所に向かった。
珈琲をいれてきてくれた彼が、変な動きでマグを持ってきてくる。笑いながら痛がる不思議な表情に俺も口元が緩む。
ちゃんと目 覚めたのか?
あぁ。珈琲の良い香りで、な。
なんだ。寂しくて起きたんじゃないのか?
ハハ 一発屋の格好つけかよ?
格好つかん。腰がやられたようだ。
…老いたもんだな。
手渡された珈琲カップに口を寄せる。
一口飲みながら、互いに腰や首に手をやる。どことは言わず痛いのだが、口にはしなかった。それともう一つ。
「もうワンチャン」も、この日 遂に聞くことはなかった。
「「終」」
20190401 しずく
男性誌でやたら取り上げる【死ぬ迄セッする】云々ですが、餓えてるのは若い頃に健全プレイヤーだった方々ではないのかと思うのですが、皆さんはどうお考えでしょうか。
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