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PTAに金持ちは鬼に金棒以上の凶悪さだろうが、どうか目をつけられずに強く生きろよと願う。
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《前作のダイジェスト!》
男前寄りの平凡(?)男子高校生、夏木千世(なつきちせ)は一部の人種から王道学園と呼ばれている全寮制男子校に編入することになった。
ヤバい金持ちの理不尽に振り回され不機嫌になりつつやっと着いた高校では、案内係に罵倒され放置されるという高難易度のプレイを体験する事態に陥り、あきらめて勝手に学園内を散策することに。
しかし、噴水の乱立する広大な学園内はかなりの初見殺しで、千世はあえなく迷子になる。
そんなとき、偶然通りかかった森(?)の中から怒鳴り声が聞こえた。
やっと人を見つけたぞ、道を聞こうという軽いノリで向かったその場には、なんと彼の運命の人がいた。
そんで、殴り合いで、友情どころか、愛情が芽生えたよ!!
ふたりはその脚で、職員室を目指し始めたのだった。
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ふたり手を繋ぎ、歩くこと数分。
ぽかぽかとした陽気のなかをいくのは散歩のようで、なんだかくすぐったくて心地いい。
しかし残念なことに、職員室には案外すぐ着いてしまった。
「ここが職員室だ。チィは何年だ?」
「俺は2年。シンは?」
「俺も同じだ。2年なら前側の扉から声かけろ」
「わかった。ありがとな」
名残惜しく思いながら、シンの手を離してドアをノックする。
「失礼します、転校生の夏木千世です。遅れました」
「・・・やっときたか。お前の担任の高城(たかじょう)だ。お前はS組。俺に面倒は掛けんな。以上だ」
「はあ。で、この後は教室に顔出す、でいいんですか?」
「まあそんな感じだ。振るから、勝手に自己紹介しとけ」
「・・・はあ、了解しました」
高城は俺を廊下に追い出すと、ちょっと待ってろ、と言い残してブラブラと職員室に引き返していった。
ここまで露骨に生徒に興味ない態度とるのも珍しいな、と面白くはあるが、果たして保護者からの反応は大丈夫なのだろうか、あの教師。
俺がそうやって勝手な心配をしていると、シンが俺にゆったりと近づいてきた。
「チィ、これからどうするんだ」
「ん、とりあえず教室で自己紹介だ」
シンは、ごく自然な流れで俺の腰を取る。
すると、空いた片手で俺のワイシャツの胸ポケットに、何かの紙を落とし込んできた。
さっそく広げてみると、それは、シンの連絡先が書かれたメモだった。
「終わったらよべ。迎えに行く」
「わかった」
そして腰を離そうとするシン。
しかし俺は、シンの手に自分の手を重ねることで、それをやんわりと止めた。
「どうした?」
「・・・なんだか、離れがたいんだ。まだ会ったばかりなのにな」
俺は少し苦笑しつつ、答える。
そう。本当に今更だが、俺たちはあったばかりなのだ。
そんな俺に、シンは一瞬目を見張った。
しかし、それは本当に一瞬の出来事で、その後すぐに、シンはしかめた顔になった。
「っほんとに・・・チィ、そんな可愛いことばっかいってると今すぐ襲うぞ」
「俺としてはそれでも全然構わないんだがな・・・」
「煽るなよ・・・」
そういったあとすぐ、シンは俺の唇を荒々しく食み始めた。
甘くて、少し苦い味もする。この味は、コーヒーだろうか?
なんの銘柄だろう。
このときはまだ、余裕があった。
「ン・・・ふ、・・・っクチュ」
「ンン・・・ハァッ・・・・・・ヂュッ」
しかし、そんな風に考え事をしていられたのは最初のほうまでだった。
段々と舌の絡ませ方が大胆になっていき、最終的にはお互い余裕など一切なく、まるで貪るかのような有り様になったからだ。
何処からが自分で、何処からがシンなのか分からないくらいにお互いを絡ませる。
こんな有様、あいつが見たら興奮で死ぬんじゃないか?
そのくらい、長く、深く口付けていたときだった。
ダルダル、と職員室の中の気配がドアへ近付いてくるのが分かった。きっとさっきの教師が出てくるのだろう。
そのため、名残惜しくはあったが、シンと二人、苦笑しつつ体を離すしかなかった。
こういう時、下手に気配を探れると、そっちに気がいって集中出来なくなるのが玉に瑕だ。
そして、案の定と言えばいいのか、俺達が体を離して少したったときに、ガラガラという重い音を立て職員室の扉が開いた。
「そんじゃ行くぞー。ん?なんで大神がこんな所にいんだ?・・・まぁいいか。おい転校生、さっさとこい」
「はい」
どうやら名前すら覚えられていない様子に苦笑しつつ、大人しく担任の後を追う。
そして、名残惜しさから一瞬だけ後ろを振り返る。・・・そこでは、シンが、鋭い目元を優しげに緩めて俺を見送っていた。
俺の身体が歓喜に震える。
『あれは俺のモノ』
そう思うだけで、ゾクゾクした快感が俺を襲うのが分かった。
今すぐ飛び込みたい。
そういう衝動が俺を突き動かそうとする。
が、今は学校で、しかも転校初日だ。
そうも言っていられないことはわかり切っていた。
俺は振り返るのをやめて正面を向くと、右手を軽く上げて歩みを進める。
しかし、そんな俺の衝動を分かっていたのか、シンがクツクツと笑う気配がした。
「連絡しろよ」
「もちろんだ」
俺の甘えた感情を露呈させたみたいで、結構気恥しい。だが、そう思う以上に嬉しいと感じたのは、正しく恋のなせる技、だろうか。
さながら、長年連れ添った恋人のようだ、と思ってしまったのだ。仕方あるまい。
熱くなった胸を落ち着かせるように、意識を傾ける。
教室まではあと少しだった。
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