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ジャノメは持ってないがそれでも心躍るのは、正しく俺の心情のせいだって言うのはちゃんと理解できてる。
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金持ちの心理に疑問を呈しながらも中庭(?)の鑑賞を続けていると、向かい側から人影がやってくるのが見えた。
陽にキラキラと輝く銀の髪。シンだ。
「シン、こっちだ」
シンの顔が目視できる距離まで近付いてきたとき、俺はそういって手を挙げた。
中庭に無数に存在しているベンチを虱潰しに探していたようだった。
なにしろ、対岸がよく見えないくらいの中庭だからな。
「悪い、待たせたなチィ」
「いや、むしろ迎えに来てもらって申し訳ない」
「気にするな。まだ慣れてないんだから、甘えてろよ」
そういってシンは、俺の硬めの黒髪を優しく撫ぜた。
節くれ立って硬い、大きな男の手だ。
今まで、そんなものに欠片の興味も抱かなかったのに、それがシンだというだけでこんなにも愛おしい。
ゆっくりと離れていくシンの手を、少し名残惜しく感じた。
「んじゃあ、そろそろ寮のほうに行ってみるか」
「ああ、頼む」
だが現金にも、自然と繋がれていく手にすぐ気分が持ち上がり、ついでに頬も緩んだ。
自分でいうのもなんだが、まるで人が変わったみたいだ。
「まずは、チィの部屋に一回行こう。同室のやつの名前も確認しないとだしな。部屋、どこだって?」
「たしか一階南向きの角部屋だって言われたはずだ」
「・・・ああ、あそこか」
少しの逡巡の後、唸るような低い声でシンが呟く。
一円玉がはさめそうなほど眉間に皺を寄せ、何故だかすごく不機嫌そうだ。
そして、そのままの低い声で続ける。
「なあ、チィ。もしかしたら、俺の部屋に移動したほうがいいかもしれない」
「・・・何かまずいものがいるのか?」
「ああ。それも、この学園で一番」
「そんなになのか」
「そんなにだ。今から行けば、多分すぐにわかる。とりあえず、今日は必要なもんだけ取って、急いで俺の部屋にいくぞ」
「シンがそこまでいうくらいだからな、分かった」
「ったく、よりにもよってあそこなんて、学園側は何を考えてやがる・・・!」
繋いだ手にグッと力が込められ、シンの怒り具合が伝わってくる。
そして、そんなシンを見止めた俺も、シンにそんな顔をさせるまだ見ぬ同室者に、静かに憤りを感じるのだった。
シンの心配が杞憂だった場合には、大変申し訳ないことを考えていると思う。が、多分そうはならないだろう。
なぜならば。
一方的に啖呵を切られていた、あの状況ですら怒らなかったシンが、大した理由もなしにここまで機嫌を損ねることはないと思うからだ。
これは相当厄介なやつがいそうだな・・・。
そう思ってげんなりするが、それを口実にシンの部屋で一緒に過ごせるのは、少しラッキーだと思ってしまう。
「まずは、寮監室に行って、部屋の鍵を取りに行くぞ」
俺達の足は、寮監室へと向かった。
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