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4月30日。
平成最後の日、夜飯を食い終わり寛いでいると三条のスマホが鳴った。
すぐに着信をとった三条はうんうんと注意深く相手の話に相槌を打つ。
夕方に、陣痛がきたと連絡があってからそわそわしていた三条の声が少しずつ落ち着いていく。
その声と砕けた口調で相手が誰かすぐに解った。
「産まれた?
何時?
優登は?
うん…うん。
わかった。
一旦帰る。
…え?良いよ。」
盗み聞きは趣味が悪い。
三条を定位置に残し、長岡は台所に行くと飲み物をマグに注ぎ喉を潤す。
電話越しに頷く三条の髪がサラサラと動いているが、背を向けてマグを傾ける。
「わかった。
じゃ、父さんも気を付けて。」
通話を切った三条は長岡後を追い、目を見て報告をした。
「産まれたそうです。」
「そうか…。
良かった。
お兄ちゃん、おめでとう。」
「ありがとうございます。」
「元気で産まれたならなによりだ。
帰るか?
送るぞ。」
「あの、それで、明日病院に行きたいです。
夕方にはまた戻って来たいんですけど…」
申し訳なさそうに眉を下げられ、長岡はふと笑った。
三条は、え?と不思議がる。
「俺は構わねぇよ。
会いに行きな。
家まで送る。
そんで、帰ってこい。」
「バスがあるので、大丈夫です。
そこまで甘えられません。」
やっぱり線を引かれてしまったか。
三条らしいと言えばらしいが、そんなの寂しいだろ。
「外デート。」
「デート…」
「そ。
デート。
嫌か?」
「い、嫌じゃないっですっ」
でも、と口籠りそうな三条より早く口を開いていく。
「じゃあ、送る。
帰りもバスがなきゃ連絡しな。
食材買いに出なきゃだし、午後から合流しようか。」
頬をつつくと、その手をとられあたたかなぬくもりに包まれた。
ありがとうございます、なんて気にしなくて良い。
だって、三条の大切な家族の事だろ。
俺だって大切にしたいんだ。
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