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一言二言会話を交わすと、小さな頭が教室からゾロゾロ出てきた。
懐かしい時間はもうおしまい。
目の前の元教え子も僅かに表情を変えた。
今日は部活に顔を出すつもりでいたが、定時をむかえたらすぐに帰りたくなる。
生徒の影に隠れトンッとポケットを突いたが気が付いただろうか。
…なんて、杞憂だ。
目の前の元教え子は尻尾が隠しきれていない。
「じゃあ、行くな。
勉強、頑張れ」
「はい。
失礼します」
「失礼します」
去り際に、とんっと手の甲をぶつける。
清潔なにおいが風に混ざってやってきた。
愛しいにおい。
「先生、誰ですか?」
「前の学校での生徒ですよ。
自慢の」
「へぇ。
カップルですか?
彼氏の方、細いですね。
ガリガリ」
馬鹿言え。
細い方は、俺のだ。
「ほら、次の教室行きますよ。
迷子になったら校内放送お願いしますから気を付けてください」
「ぇ…」
中川の彼氏、なんて言うから少し意地の悪い事を言う。
ま、本当の事なんて当人同士が知っていればそれで良い。
教えてなんかやらねぇけどな。
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