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「遥登、そっちの味一口くれるか?」
「はい」
口を開けると小さなスプーンに緑色の寒天とあんこを掬い差し出してきた。
若干目が泳いでいるが。
あえて指摘せず食い付いた。
「お、抹茶うめぇ」
抹茶の風味がふわっと口に拡がり、微かな苦味とふっくら炊けたあんこの組合わせが最高だ。
すっとした苦味は嫌味がなく、同じあんこの筈だがこんなにも印象を変えるのか。
だが、頷く三条は中々次の一口を食べない。
「平気なんだろ?」
「へ、平気です…」
スプーンを持ったまま動かない恋人はどうしようか頭をフル回転させている筈。
もっと自分の事だけ考えさせたい。
何時もの独占欲。
みっともなかろうが三条の前なら晒け出せる。
「はーるちゃん」
「…た、べますっ」
と言う割りにスプーンが動かない。
「…しかたねぇな。
ほら、スプーン貸せ。
拭くから」
「あ、勿体ない…」
勿体ない…?
「っ、違いますっ」
「ははっ、ははは…っ」
「笑わないでくださいよっ」
「勿体ないって…ははっ、かわい…」
ちゅ、と触れるだけの、だけど間接じゃないキスをする。
「んなの、俺にすりゃ良いだろ」
「それはそれ……これは、これです…」
この子のこんな顔が見られるなら、毒されようが牙を抜かれようが構わない。
あぁ、もう首ったけだ。
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