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少年として育ったハル-3
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その後、押し付けることを辞めた家族はハルの意見を尊重し、アドバイスするだけに留め誓い通り見守ったのだが……ハルは自分のことを『僕』と言い続け、スカートを履くことも無かった。
中学からは制服の無い学校に通い、自分の好きなように振舞った……まるで男の子のように。
「ハル……まだ無理してるんだったら本気で怒るよ?」
自分の好きにすると言いながらもボーイッシュであり続けるハルの態度に少しの苛立ちを持った美琴は、中学高校と同じ時を過ごした。
単に家から近い学校を選んだだけだと自分に言い聞かせてはいるが、ハルの隣は心が穏やかになり居心地が良いのも否定できない事実だ。
「ははっ。無理なんてして無いって。これが自然体なんだよねー」
一見やる気がないのかと疑われるハルの言動と行動だが、幼い頃から変わらず安定している。
生い立ちが複雑であることも多少は影響しているかも知れないが、本来なら何事にも全力でぶつかる子供時代であれハルの態度は変わらなかった。
無気力だと捉えられることも頻繁にあるのだが、努力を怠らない真面目さは他の生徒や教師からも評価が高く、その内誰も気にしなくなって行った。
173cmのハルは顔が小さく手脚が長いせいか、実際の身長よりも高く感じられ、引き締まったしなやかな身体も余計にスタイルを良く見せていた。
女性のまろやかさには欠ける体型だが清潔感があり男女共に人気者で、本人は脱力系だが周りはいつも熱く盛り上がっていた。
「あ、あの……その、す、好きです!……つ、付き合って下さい!!!」
思春期ならではとでも言うのか、急成長する男子達に嫌悪感を抱く女子も少なからずは居るわけで……男性的だが男臭さを感じないハルは女子から告白される事も多かった。
また女子が苦手な男子達からもサッパリしたハルは憧れの的であり、控えめに言ってもよくモテた。
「ありがとう……でも、僕には恋愛とか……よく分からないんだ……ごめんね」
少しはにかんで照れながらお付き合いを断わるハルは、逆恨みされることもなく、更に人気を上げていったのだが、本人はまるで自覚がなく飄々としている。
そんな彼女を見て昔より更に感情が薄くなったのでは無いかと気に病んでいた美琴は、ハルから悩みが有ると打ち明けられた時、血の通った人間だと内心ホッとしたものだ。
「このまま……誰も好きにならずに過ごしていくのかな」
よく告白されるようになったハルが、断ったあと彼女らと別れて眉間に皺を寄せる度に心配をしていた美琴は、うーん、と唸ったあと深刻にならない程度に答えた。
「人生長いんだよ。その内に心を掻き乱される位好きになる人が現れるよ」
自信満々に言った美琴だが、彼女自身にもそんな相手はまだ居ない。
(ま、そのうちにね)
気軽に考える二人はその後別々の大学へ進み、再び就職先で共に同じ社員証を持つようになっても恋を知ることは無かった。
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