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男体を手に入れたハル-1
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「洗浄師様の隣の者は誰ですかな?護衛を連れてくるのは初ですぞ!」
「しかし、『ちきゅう』に獣人が居るとはどの文献にも書かれていなかったぞ!ーー召喚の光を利用して紛れ込んだのかもしれん。怪しいな、引っ捕らえろ!」
「はっ!」
手足を動かせずに意識が戻ってくるのを待っていたハルは、異世界転移とはここまで眠くなるものなのかとウンザリしていたのだが、追い討ちをかけるような言葉に自分が置かれている立場が危ういものだと即座に判断した。
しかし体力を使い果たしたのか体が痺れて思うようにならず、せめて美琴の安否を知るために重たい瞼を気合で開けた。
(え?この美少女は……美琴か?)
そこには懐かしい十代の頃の美琴が金髪に変化した豊かな髪を床に広げ、生まれたままの姿……つまり、全裸で眠っていた。
(何だこのテカテカの床は……大理石か?この浅い溝は……魔法陣?……それよりも……何かで美琴の体を隠さなければ)
随分と若返った親友の変わりように驚いたハルだが、『神の使い』が自分たちを若返らせると言っていたことを思い出し、今持ち合わせている全ての力を込めて美琴の方へと腕を伸ばした。
その瞬間!!
「洗浄師様に触れるな!こやつを牢へ連れて行け!」
怒鳴り散らす男を目線だけで探り当てると、そこにはキラキラ王子様系の美形がハルを冷たく見下ろしながら、彼の部下であろう男達に指示を出す姿が見えた。
ハルは反論したくとも疲労感は既にマックスで限界が来ており、悔しい思いをせめてぶつけてやろうとその男を鋭く睨んでから意識を失った。
*
再び目覚めたハルはまだ少し痺れの残る体に力を込めて起き上がると、上半身が裸であることに気が付いた。
下半身は誰かが着せてくれたのか、ウエストを紐で縛るタイプのイージーパンツを履いており、その荒い素材がお尻にチクチク刺激を与えることから、下着までは与えられなかったことを把握した。
「んーーー、さっきのが聞き間違えでなきゃ美琴は安全だな。それにしても妙なことばかり話していたっけ」
先程耳にした内容を霞のかかった脳内で反芻しながら、ふと自分の鍛え抜かれた腹筋に目がいく。
そこにはスポーツジムで付けただけとは思えない程の凹凸が広がっており、細身ではあるが胸や腕にもしっかりと盛り上がった筋肉がついていた。
元々柔らかい部分など持ち合わせていなかったハルだが、流石にこの体が自分の知るものでは無いものだと分かる。
「ってことは……まさかの……ちんこが?」
そーっと震える指先を布の上から見てもほんのり膨らんでいる股間部分に近づけて、一瞬ためらったあと以前よりも一回り大きくなった手をゆっくりと動かし、節のしっかりした指で包み込んだ。
(……っ!あった!!!!!)
紛れもなくハルが欲してやまない男の象徴がしっかりと生えているのを確認し、喜びのあまり涙を流しながら転移する直前の『神の使い』が話したことは本当だったのだと感激した。
「ちんこばかりでなく……体全体を男にしてくれたんだ!」
恍惚とした表情で天を仰いだハルは、そこが薄暗く鬱々とした牢であることに初めて気がつき、喜びが一気に失せてしまった。
しかしBLから得た情報で自分の知る限りでは、ここまで清潔な牢は存在しないほど掃除が行き届いており、寝かされていたベッドも洗いたてのシーツが被せられている。
日本の畳で言うと十畳程の部屋を偵察がてら彷徨いてみると、簡易ベッドの他に腰から下が隠れるよう仕切りで囲まれた洋式トイレまである。
「異世界人だと分かるまでは、一応それ相応の扱いを受けられるってことかな」
ベッドの横にある簡素な台にある水差しを見て、誰に問いかけるでも無く呟いたハルは、自分が思ったより酷い扱いを受けていないことに少しホッとした。
普段から独り言の多いハルはこれが通常運転だ。
ーーそれから一応試しては見た。
「ステータスオープン!」
しーーーーん
「ですよねー。そこまで自分の思い描いた通りにはいかないよなー」
ここで言うステータスとはゲームやITの分野で使用される『状態』という意味で、お気に入りの異世界転移ものでは、自分にどの様な能力が有るのかひと目でわかるシステムだ。
どっぷりファンタジー系のBLにハマってからは憧れでもある一覧表なので、それが現れずに少々ガッカリするハルだった。
これでは『神の使い』が与えたというチートが何なのか、さっぱり分からない。
「まあ、徐々に分かっていく方が面白かったりするからな」
ふと思い付き、自分が寄り掛かっていた白い石壁の上部にある明り取りの小窓に手を伸ばしてみたが、やはり届かなかった。
しかし立ち上がって気がついたことだが、俯いた時に確実に床が以前よりも遠く感じるので、元々女性の中では高めだった身長も更に伸びていると思われる。
小窓の外側には頑丈そうな格子がびっしりと取り付けられているので、もし手が届いてよじ登ったとしても逃げ出すのはそもそも不可能かも知れない。
ここが何階相当の高さかも分からない現状にぶち当たり、改めて囚われの身である理不尽さにふつふつと怒りが湧いてきた。
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