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労をねぎらう食事会-2
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土魔法での捜索を得意とするヘンリーを中心に集められた者達により、ラビッタの全滅が確定された後、予定通り夕刻にはモナの転移魔法によってハルたちは王城へ戻ってきた。
「俺は動けるようになるまで砦に残ることを覚悟していたんだ。こんなに早く復活出来るとは思ってもみなかった。ありがとな、ハル」
ハルが骨折から脱臼、その他の傷をまとめて治療したことで、自らの力で歩き王城へ着いた騎士達が改めて感謝の言葉を口々にしだした。
視界の端に俯いたジュリアスの姿を捉えたハルは、今が良い機会だと考えて辺りの者達へ大きな声を発した。
「まず、僕だけの力ではありません。治癒魔法の使用に関係なく手当に加わった方々、負傷されたご本人の頑張りによるものです」
ゆっくりと辺りを見回しながら話していると、王城に着いたことで安心したのか多くの者が潤んだ瞳でハルを見ている。
「それと、僕は心の傷までは治せていません。今回の討伐で心的外傷を負った方もいるかも知れませんので、皆さんが辛くなった時はそれぞれ信頼のおける医師にご相談下さるようお願いします」
静かに聞いていた騎士や魔術師達はハルの言葉に真摯に頷くと、皆一同に深く頭を下げてハルの真心(まごころ)に感謝した。
その後雪豹・ジュリアスが第一騎士団の分隊への移動願いを出し、王都に隣接した街へ移り住む旨を耳にしたハルは、何かを抱え込んでいるような彼を案じている。
凶暴な魔物討伐を無事に終えて王城へと帰還したハル達はその夜、国王の計らいで簡易的ではあるが労をねぎらう食事会に招かれ、賑やかな宴を楽しんでいる。
「この世界で唐揚げが食べられるとは思ってなかったよ。……んむっ、美味い!」
「本当にこの癖になる味は堪らないよね。唐揚げ最高!肉最高!」
肉好きで有名なセルディと童心に返ったハルは、料理の追加を運んできた給仕係が思わず頬を緩めてしまう程のはしゃぎ様で、次から次に現れる肉料理を口に頬張る作業に勤しんでいる。
「もう落ち着いてよ二人とも!肉料理は逃げないってば!それに野菜もちゃんと食べな」
テッドと同じピンク色の髪と瞳を持つ兄のアルミンは、何かに追い立てられるかのような食べ方をする二人に文句を言いながらも、空いた皿を脇に寄せて飲み物を渡したりと面倒をみるのに忙しい。
「だってさ。ルピが調合してくれた胃薬を飲んだら食欲が鬼のように出たんだ。仕方ないだろ」
初めての魔物討伐後、食べ物を受け付けなくなったハルを案じたルピが、食事会が始まる前に寄越してくれた胃薬の効果は絶大で、胸のムカムカすら突破らってくれた。
「アルミンがおかん属性だったのは嬉しい誤算だけど、さっさと食べなきゃ無くなっちゃうよ?」
「おかん属性?そんな魔法は聞いたことが無いよ?ハルは時々訳の分からないことを話すよね……異世界語って不思議だな」
甲斐甲斐しく世話を焼くアルミンを眺めながら、彼は絶対に『おかん属性の健気受け』だなと妄想に浸っていると、頭上からリバーダルスの呆れた声が降ってきた。
「ハルを基準にしたら異世界人に失礼だぞ。……どうせあちらでも特殊な思考なのだろう」
「正解です!特殊な考え方と言うよりも……僕の趣味は知らなきゃ人生損をする!と言っても過言では無いくらい、熱く滾る腐の世界であり、めくるめく男達のーー」
「分かったから食べながら話しをするな」
国王への挨拶を終わらせて来たリバーダルスが、ハルの隣席に腰を下ろして今から食事をとるようだ。
普段は行儀の良いハルが作法などスッカリ忘れ、唐揚げを頬張り熱弁し始める姿に驚いた彼も、アルミンが小皿に取り分けてくれた料理を咀嚼しながら、ハルの食欲が戻ったことに安心し胸をなで下ろした。
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