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繰り広げられる戦い-1
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「ダニエル!!何故なんだ!君はあんなに優しい子だったのに!!」
バタバタと足音がして第二王子のアンソニーが美琴と共に玉座の間へと入ってくると、それを追って三人の獣人もやって来てダニエルのサイドへ並んだ。
「アンソニー兄上。どうして起きてしまわれたの?貴方は何時でも僕には優しかった。……だから美琴と共に助けたかったのに」
獣人を母に持つダニエルは幼い頃、まだ魔力も高くなくケモ耳と尻尾が隠せないでいた。
子供とは身分に関係なく時には残酷で、王宮勤めの子供たちに影でよくからかわれていた。
そんな彼を何時でも飛んできて守ってくれたのがアンソニーであった為、ダニエルは彼にとても懐き信頼も寄せている。
「アンソニー兄上だけは傷付けたく無いので、……貴方は眠っていて下さい」
ダニエルが詠唱を始めるとゆっくりとアンソニーが崩れてその場に横たわり、浮遊魔法によってフワフワと離れた場所にあるソファーに運ばれ寝かされた。
更に壊れ物を扱うかのように丁寧な結界魔法を施し彼を守る。
「美琴、……君がアンソニー兄上の眠りを覚ませたんだね?黙って寝てりゃ良いものを。*****、*****」
「美琴危ない!」
ダニエルは詠唱と共に美琴へ氷の弓を放って攻撃を仕掛けてきたのだが、美琴は冷静に結界を張って防御する。
跳ね返った氷の弓が壁に刺さってヒビが入ると、まるで爆弾でも仕掛けられていたかのように大きな穴があき、攻撃の威力が桁違いだと知らせていた。
「ごめんねハル。私は攻撃魔法は使えないし、スライム結界も張れないわ。ここでは自己を守る為にしか魔力を使えないの」
洗浄師はそもそもこの世界では誰も成し遂げられない『邪心』を洗浄する為に召喚されるものだ。
誰かを攻撃するための魔力は与えられないのが通常であり、何も憂うことは無い。
「美琴は自分に結界を張り続けて!傍に居てくれるだけで僕は頑張れるからさ!」
「ハルもすっかりこちらの世界に馴染んだようね。あなたの正義感は必ず報われるわよ。最後まで見届けるから何とかしなさいね!」
「お、おう!」
まるでお母さんの様な口調で話す美琴が彼女なりのエールだと分かっているハルは、本当に何とかしなきゃと頭を働かせた。
「僕の攻撃魔法が効かないのなら、まずは皆さんでダニエル殿下の結界を破って下さい!」
ハルが叫ぶと皆がダニエルの結界へと一斉に解除魔法をかけて行くが、頑丈に張られた結界はビクともしない。
しかし他に方法が見つからない以上は解除魔法を掛け続けるしかないと思い、諦めずに挑んでいく。
余裕の態度を崩さないダニエルは、弟であるリバーダルスに氷のような冷めた目を向けて話し出した。
「僕は国王の愛情を独り占めして、しかも自分だけさっさと王宮から逃げ出した上に、魂の番を得たリバーダルスが憎いんだ」
「魂の番???」
思わず美琴が口に出した言葉は、この場にいる特別騎士団の魔法騎士達も同じように疑問に思っていたので、解除魔法の手が緩んでしまう。
「リバーダルスとハルは魂の番だよ。二人からは互いの精液の匂いがプンプンしてくるからね。それで力を蓄えたつもりなら僕が思い知らせてあげるよ」
二人がそんな仲になっているとは知らなかった仲間たちは、目を剥いて驚いたのだが「頼もしい」と呟くと、再びダニエルに向かって解除魔法の詠唱を続けた。
ダニエルの手下と思われる三人の獣人もかなり魔力が高く、彼らの打つ攻撃魔法はセルディが風魔法で吹き飛ばし、リバーダルスが炎の弾丸を打って応戦する。
互いに打ち合ったものが重なると爆音が鳴り響き、天井が風圧で崩れ落ちて床にも亀裂が入り、そこら中がひどい荒れ様だ。
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