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* Sweet.1 *
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最寄りの駅に着くまでは、もちろん話なんて弾まなかった。
夕里が一方的に会話のキャッチボールに参加しなかっただけで、茅野にはプライベートについていろいろと聞かれた。
電車はそれぞれ正反対の方向だったので、ようやく解放されることにほっとする。
改札を抜けたところで、見知らぬ小学生くらいの男の子が茅野に向かって突進してきた。
「舜にい……! 大変だから、今すぐお家に帰ってきて!」
がま口の財布を下げた少年は、茅野の服をぐいぐい引っ張っるのに必死だ。
待て待て、と茅野は同じ目線までしゃがんで、年相応に取り乱す少年を宥める。
学校の友達と接するときよりかは幾分か柔らかく優しく、それでもしっかりとした口調で問いかける。
「大変ってどうしたんだ? うち、今そんなに忙しいのか?」
「……お母さんとお父さん、お仕事出てて。舞[マイ]が熱出てて苦しそうにしてる!」
「連[レン]は帰ってきてないのか?」
「連にい……まだ帰ってない」
茅野の姿を見て安心しきったのか、小学生らしく甘えてぐずり始める。
幼かった頃の弟を思い出して、夕里も懐かしみを覚えた。
弟もお兄ちゃんっ子だったのに、中学校に入学した直後から生意気に育ってしまった。
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