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* Sweet.7 *
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「ありがとう。千里君に心配かけないようにしないとね、夕里?」
しんみりした空気の場に長くいるのはやっぱり苦手で、夕里は素直にうん、と頷いた。
3人揃って遅刻になってしまったが、いっそ清々しい。
次に来る電車に乗るぞ、と茅野に目配せをして、夕里はスクールバッグを肩にかけ直した。
「あっ!」
突然思いついたように声を上げる千里につられて、夕里は顔の向いているほうを同じく見た。
古典的な方法に引っかかった夕里は慌ててスマートフォンのカメラを起動して、両手で構えた。
死角からちゅっ、と軽いリップ音とともに、頬に柔らかいものが触れる。
さっきまでみっともない泣き顔を晒していたのにその面影はなく、にやっと小馬鹿にした笑みを見せた。
「そういうところがちょろいんだから。お兄ちゃん?」
じゃあね、とひらひら手を振る千里の背に、熱の残る頬を押さえながら、まともな言葉になりきらない声を漏らす。
「また……またキスされたぁ……」
意図せずに頭につけた言葉を聞き逃さなかった茅野に、1日中問い詰められることになり、夕里はしばらくの間抜け目のない弟を恨んだ。
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