アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
シュガーホリック シュガーライク
-
たった1人から、甘い言葉を囁かれるだけで……それだけで──。
心の中の素直な気持ちをさらけ出した途端、一瞬だけ茅野の腕に抱き締められていた。
茅野の指が黒い髪の間を通っていく。
「俺だってかなり妬かされたよ。……朝日と手握ってただろ」
茅野が珍しくむすっとした表情をしている。
単純な夕里は「何で友達の寺沢に妬くんだ」と疑問を浮かべたけれど、口にはしない。
夕里と同じもやもやを抱えている茅野を見るのが、ちょっと楽しかったからだ。
「じゃあ、茅野が女子と仲良くしたら俺もこれからめちゃくちゃ妬くから! 茅野ももっとやきもち妬いてもいいよ?」
「うわ、出た。小悪魔。……まあ、気遣ってくれたから今日はいいか」
思わず口走ってきた言葉を反芻してみれば、一気に恥ずかしさが込み上げてくる。
今度は茅野がにやにやする側だ。
いつまでも髪を弄っているから、さすがに焦れったくなって頭をふるふると振った。
「ああ、そっちのほうが早かったかも。ほら、全部取れた」
「何が?」
「桜の花びら。いつもみたいにピンクの髪だったら紛れて分かんなかった」
髪に手をやるとさらさらには程遠い感触が、指に触れる。
また染め直しなんて骨が折れるな、と夕里は短い溜め息を吐いたが、すぐに春風に拐われたから茅野の耳には届かなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
240 / 255