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四天王のパーティー②
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「はぁ...」
「あの...」
急に声をかけられ振り返ると俺と同じように首枷を付けられた女がこちらを見ていた。
明るい橙色の長い髪を少し乱しながら、複雑そうな表情を浮かべている。回復系魔法使いの服を着ている所を見ると冒険者と言ったところだろうか。
「あのっ...、貴方も捕まったのですか?他の方より元気そうですし、少しお話しませんか。」
俺は女から視線を逸らし、ドストミウルが去った階段のある前だけを見つめていた。
「私、この間まで王都で傭兵をしていて、戦い中に拘束されたんです。回復職という事もあって色々...いいように利用されて...」
女は少し泣きそうになりながら自分の身の上をつらつらと吐き出していた。
「ごっ、ごめんなさい私の事ばかり、貴方もきっと苦労されているのでしょう。」
王都の傭兵と聞いて少し厄介だとは思った、俺の事を知っている可能性がある。まあ知っていたところで奴隷になっている身じゃ、今更どうにもならないだろうけど。
「俺は別に不自由してねぇから。」
なにも答えてやらないのも不憫だと思って、視線は合わせなかったが答えてやった。
「強がらなくていいんですよ。私はリリシュアと言います。貴方のお名前は?」
なんだか感情的になっていくその女の声に、帰りたいと強く思った。
「カノルだ。」
「カノル・ファロンス様!?勇者第三部隊、天命の弓と謳われた天才」
リリシュアと名乗った女はいつの間にか俺の手を握っていた。
...最悪だ。
こいつ俺の事を知ってやがった。しかも、1番呼んで欲しくない異名で呼ばれ、きらきらした尊敬の眼差しでこちらを見つめてきやがる。
第三部隊とはいえ、勇者部隊に入っていただけそこそこ名前が通っていた事を恨んだ。
「私、勇者部隊にとても憧れていて、まさか亡くなったと言われていた貴方様が生きておられたなんて、もしかして捕虜にされて生き延びていたのですか」
リリシュアはさらに熱のこもった表情でカノルを見つめた。カノルは苦い顔をしながら首を逸らし、視線を合わせまいと必死になった。
「なんとか協力して逃げましょう。貴方様が王都に戻れば協力な戦力になります。」
ドクターのカウンセリングをしながら、人間嫌いで酷く気分が悪くなるのは自覚していた。特に敵意を向けられたり、あの時を思わせる冒険者と対峙した時に酷くなる傾向があるようだ。
今向けられているのは敵意でも武器でもないが、今すぐにでも吐けそうなくらい気分が悪かった。
なんでこいつはこんなに手が熱いんだ。
「カノル様を捕らえたモンスターはアンデッドですか...汚らわしい。」
それを聞いて不快で重くなった体が冴えた、混濁した意識がひとつの言葉に引っかかる。
「酷いことはされていませんか?あの化け物共、早く勇者様に消されてしまえばいいのに!!」
汚らわしい?消されろ?
何を言ってるんだコイツ...
「カノル様のようなお強い方がいれば、きっと何とかしてこの状況から逃れらるはずです!もうあんな残虐非道で気色の悪い化け物共の言いなりになる必要は無くなりますね!ああ、これぞ神の祝福...」
カノルは立ち上がると同時にリリシュアの手を強く振り払った。
「勝手なこと言いやがって...」
リリシュアは驚いた顔でカノルを見上げた。
「アンタの価値観を押し付けてんじゃねーよ!王国が俺に何をしてくれた?部隊は俺を殺しただけだ...ひでえ仕打ちをしたのは人間の方だろうが!」
家族のために頑張ってきた俺をゴミのように切り捨てて、人間としての人生をめちゃくちゃにしたのは人間だ。それがなんだ、偉そうに消えればいいだと。
腹が立つ...消えればいいのは人間の方だ!
「なんも知らないてめぇがこれ以上ドストミウルをアンデッド達を汚すんじゃねえ!!」
カノルは完全に頭に血が登り、怒りで我を忘れていた。自分を裏切った人間に、何故助けてくれた仲間を侮辱されなければいけないのだろうか、怒りのこ穂先はリリシュアに向けられた。
「かっ、カノル様、もしや操られて...」
鈍い音が女の頭に響いた。
カノルは強く握った拳でリリシュアを殴りつけていた。
「ごめんなさい、そんなつもりじゃ...いっ...いたっ...やめてっ...」
頭を抱えて転がり伏せるリリシュアを追うようにのしかかりカノルは何度も何度殴り続けた。
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