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四天王のパーティー③
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適当に盛った食事の皿を両手に持ちながら奴隷たちのいる場所への階段を降りていたギャリアーノは、女の悲鳴とそれに襲いかかる自らの友を見て驚いた。
ギャリアーノは皿を投げ出すと急いでカノルの腕を掴み、後ろから羽交い締めにし女から引き剥がした。
「どうどう、カノルちゃんどうしたんだい」
「うるせぇ!離せこのクソ野郎をブチ殺して冥界送りにしてやる!」
「待て待て、こんな所で目立つなと言っただろう...」
いつもとは違うカノルの様子にギャリアーノは少し焦りを感じていた。以前に冒険者と対峙して怖がっていた時とはまた違う精神の乱れ方だ。
殺すとひたにカノルは叫んでいた。
「カノル...」
ギャリアーノがふと気がつくと、カノルの背後にドストミウルが駆けつけていた。
ドストミウルが視界に入るとカノルはその怒りを少し和らげたように見えた。
ギャリアーノが拘束していた手を緩めると倒れ込むようにカノルの体の力は抜けていた。崩れそうなカノルの体をドストミウルは自らの体に押さえつけるように強く抱き寄せた。
「大丈夫だ、落ち着きなさい。」
カノルの呼吸は浅く、焦点が合わないほど混乱している様子だった。
「カノル...」
囁くように耳元でそう呼んだ。
「ああん、何事だあ?」
やってきたのは四天王の1人魔獣族の王、ヒドロだった。魔獣族は、毛むくじゃらの獣がそのまま二本足で立ったような姿をしている。ヒドロはその中でも一際体格がよく、鋭い牙と立派な二角の角を持っている。
そしてリリシュアの飼い主だったようだ。
「おうおう、オレサマの玩具がボロボロじゃねぇかあ」
ヒドロはうずくまって震えるリリシュアを見下げた。
「すまない。私のが手を上げたようだ。」
「まあ使えそうなゴミだっただけで、どうでもいいけどよ。」
魔獣族の王は退屈そうに自らの奴隷を思い切り蹴り飛ばした。
リリシュアは潰れたような悲鳴を上げたが、ヒドロは興味のひとつも無いようにドストミウルをみてパーティーの続きでもするように話を始めた。
「なあ、それより聞いたか、北の洞窟のトドーリのやつがやられたって」
ドストミウルはカノルをマントに覆い隠したまま、話を聞いた。
「トドーリか...まあ、アレがやられた所で大した問題ではあるまい」
「アイツいきがってたくせに案外あっさり逝ったよなあ、ハハハハッ!」
...
カノルはただ荒い呼吸のまま震える手でドストミウルの胸元にしがみついていた。
頭の隅に二人の四天王の話し声が聞こえたが、何を言っているのかは分からなかった。
冷たい...
意識が薄れる中、その冷えた体温ををとても心地く感じていた。
「って何やってんだ俺!」
カノルは自らの行動を思い出し驚いて上半身を起こした。
「おはよーカノル。」
声の元を見るとイフがにやにやしながらこちらを見ていた。
「安心したまえ、もう帰路だ。」
「はっ?パーティーは?」
「終わったヨ。大丈夫さ、大事には至らなかった。」
改めて見回すとそこは馬車の中だった。
「まじかよ...なんか、どっと疲れたぜ。」
カノルは大きくため息をつくと少し起こした体を再び寝かせた。
「気いもんで悪かったな、ごめん。」
向かいにいたドストミウルを見つめる。
「何故君が謝る。先にふっかけたのはあの女の方だろう。君は我々を侮辱されて激高しただけだ、君の方が悪いことなどひとつもない。」
「...」
カノルはドストミウルの言葉に疑心を抱いた。
何故あの場にいなかったドストミウルが俺達の話の内容をそんな詳しく知ってるんだ。
「アンタさ...魔法でも使って人の話盗み聞きしてた?」
びくりとドストミウルはたじろいだ。
「いや...その...何かあったらと思って」
「きっ色悪りぃな!ストーカーかてめぇ?」
「...」
そんな二人のいつものような会話に安心したようにギャリアーノは微笑みながら目を閉じた。
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