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地下室の番人②
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ドストミウルはゲイルとしばらく話をした後、俺を抱えたまま部屋まで戻った。
俺をソファーに座らせると、体を確認するようにドストミウルは近づいていた。
「痛むところは?」
「思ったより平気そう。服が少し焦げたくらいかな。」
「ほ、本当か?一度身体をよく見せてくれ」
「いいって、平気だから!」
そう言って触れようとした手を振り払うと、ドストミウルは少し体を小さくしたように見えた。
「すまなかった...、」
「なにしょぼくれてんだよ。」
「...」
こういう時は何か言いたいことがあるけど、言いたくない時は大概こうだ。
今度はドストミウルの方を見て、離れかけていた手を掴んで引く。
「言いたいことがあったらはっきり言えよ。」
「私は...いいや。いいんだ。」
「そうかよ、じゃあもう行くぞ。」
手を離しソファーから立ち上がる。
「カノル。」
俺はわざと不機嫌そうな顔をして振り返った。
「私と君は仲が良さそうに見えるだけで、君の本心は私をただのアンデッドモンスターとしかみていないのだろうか。」
いつもより低く小さい声でドストミウルは言った。
俺は笑いを口の端に押し殺しながら、ドストミウルの目の前まで近づいた。
「アンタがどう思ってるか知らないが、俺はアンタなんかなんとも思っちゃいないぜ。」
ドストミウルが俺を見つめる目がキュっと小さくなるのが見えた。
「私は、君の深い部分も知っている、それでも...」
言いかけたドストミウルの口元に指をあてる。
「そういう事口に出すなよ!...ったく、何とも思ってない奴にそんな事させないだろ普通。特別なんて適当な言葉で完結させたくなかっただけだよ。ゲイルの前で言ってたことは冗談だっつの。」
俺はドストミウルの耳元でそうささやくと、頬に小さく唇を押し付けた。
ドストミウルははっとして炎のように光る瞳でこちらを見つめた。
「んじゃ、着替えて仕事に戻りまーす。ごきげんよう、旦那様♡」
さっと体を離して茶目っ気たっぷりにそう言ってから部屋を後にした。
部屋を出て扉を閉めると込み上げてきた笑いに口元がにやける。
ドストミウルをからかうのは本当に楽しい。
地下室で言っていた事をあそこまで気にするなんて、くそ真面目な所があるのは知っていたが適当な言い訳を鵜呑みにするとは思わなかった。というかなんか女々しい。
声を抑えて笑っていると突然、背後のドアが開く。
「カノル、今日の仕事はもうしなくていいようにする。その代わり私の話し相手をしてくれ。」
「...は、はいぃ?」
珍しく強引なドストミウルに体を掴まれると有無を言わずに部屋に戻され、ベットの上に放り出された。
「何?怒ってんの?」
上半身を起こして聞くと、ドストミウルはすぐ俺の体に被さるように乗っかってきた。ゴーストの体は決して重くはない。
「怒ってなどいない。怒りに身を任せる程私は愚かではない。...が、今は君を独占したい。」
「結局欲に駆られてんじゃんかよ、十分愚かだっつの。」
「嫌かね?」
「はっ、分かってるくせに...」
今日も俺はドストミウルに身を任せた...
余談だが、地下室のゲイルはしばらく屋敷の皆から忘れられていたようでもう数十年近くあそこに一人でいたそうだ。可哀想に。
まあ寿命があってないようなアンデットからしたら短い一時なのかもしれないが、ゲイルも悪い奴では無さそうなので、時々会いに行ってやることにした。
地下室はなかなか見つからない絶好のサボり場だし、有効活用させてもらうとしよう。
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