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街へ行こう!①
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「カノル街へ行かないかね?」
「行くわけねぇだろバーカ、脳みそ腐ってんのか阿呆。」
ドストミウルは俺がいくら悪態をついたって怒りはしない。それが冗談だって分かってるし、何故か超過保護な大甘旦那様は俺に対し基本的には怒らない。
そんな事は置いておいてだ。なんで急にこんな話を持ちかけてきたのか…大体の事はわかる。
俺はここの所超真面目にドクターのカウンセリングを受けている。つらつらと滑らかに人の心を探ってくる骨に言わせたらその真面目度評価は変わってくるかもしれないが、休まずに行っているというだけで俺的には高評価だ。
つまりその超優秀な俺にどのくらいカウンセリングの効果が出ているか見たいという訳だ。ドクターに言わせる所の治療の一環、ドストミウルに言わせる所のとりあえず一緒に出かけたい、だ。
「大丈夫だ、私が常にとなりに居よう。」
「そういう話じゃねえ、行く理由がないのと行きたいと微塵も思わないから嫌なの。」
「好きな物を買ってやろう。」
「いつも買って貰ってる。」
「...」
ドストミウルは俺をどうやって連れ出すかを懸命に考え始めたようだ。だがふざけんな、物に釣られて気が変わる程簡単な話ではない。
「何故、行きたくない?症状が出るのが恐ろしいか?」
「違う、人間を見たくない。」
「それは症状が出るのが嫌だからだ。」
「ああそうだよ!用もないのに気分悪くなる所に進んで行きたがるやつなんていねぇだろ!」
「...その通りだ。分かった、手を離さないようにする。そして気分が悪くなったらすぐに帰るようにしよう。」
「はぁ?」
どうやら今回は諦めてはくれないようだ。
日が昇るとドストミウルは人の姿に化け、馬車を用意した。馭者は化けた執事長だ。
俺は重い腰を何とかあげて馬車に乗り込んだ。
座りながら肘をつき、ひどく不機嫌な顔のまま流れていく景色を見つめた。
「たまにはそういう服も悪くないな。」
金髪のおじ様は目を細めて俺を見ていた。
今日はドストミウルが仕立てさせた服を着ている。
俺は部隊で仕事をしていた時の服と、使用人の服以外持っていないからと新しく仕立ててくれたものだ。
灰色のシャツに、黒いズボン、大きめのベルトに、ごついブーツ。その上に大きい襟で、金色の刺繍の入った長めの黒い上着を羽織る。オマケに顔隠し用の大きめの帽子だ。
それと眼帯。こんな縫い目バッチリの目じゃ普通の人からは気持ち悪がられるからだ。ついでに人の街でこの使い魔君が暴走しないように封印魔法がかけられている。これをつけている限り、俺は使い魔を頼れない。その代わりしっかりと旦那様が護衛してくれるってわけだ。
「馬子にも衣装ってか?」
「似合っているよ。」
からかってもこれだ。ドストミウルからしたら俺がこうやって街に行くことを承諾してくれて嬉しいのだろう。
嬉しそうなおじ様には残念だが、俺にはただの拷問でしかない。
しばらくして街に着いた。
ドストミウルが時々出かける街だ。
中規模だが、それなりに栄えていて店の品揃えも悪くないらしい。
ドストミウルに手を引かれて馬車を降りる。
街の入口には自衛団の者が立っているが、あくまでモンスターを警戒しているだけのようで人が出入りする分には何も言わない。
ひとたび街に入ればそこは大通りで人が多く行き交っていた。
さっそく気分が悪くなった。すぐに吐けるレベルまで来ていないが、胃のあたりが苦しい。
俺は顔を隠すために被っていた帽子をさらに深くかぶった。
「きつい...帰ろうぜ。」
「せっかく来たのだ。少し店でも回ろう。」
「マジで言ってんのかよ。あ、分かったそういう嫌がらせだな、後でぶん殴る。」
「軽口がたたければまだ大丈夫そうだな。」
ドストミウルは俺の腕を強く引いた。
気分の悪さで気の抜けた俺に逆らう力は無い。
屋敷に帰ったらこの穴埋めをどうしてやろうかと頭の端で思考を巡らせた。
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