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秘密の地下室
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「なぁーなんか面白い事ねーかな?」
カノルが話しかけたのは使用人のダティアリアでもなく、話し相手のドストミウルでも無い。
今日いる場所は暗くジメジメした地下室。話し相手はそこの番人デュラハンのゲイルだ。
「暇ならサボらずに仕事をすればいいだろう。全くお前はおかしな奴だ。」
「俺からしたらアンタの方がよっぽどおかしな奴だよ。こんなくらくて狭くてジメジメした場所で何十年もじっとしてられるんだからな。」
首なしの番人はため息をついた。
この地下の番人としての仕事を嫌だとか退屈だとか思った事は1度もない。これは主に与えられた使命であるし、誰一人来ずとも立派な仕事だと思っているからだ。
まあそれを言ってもカノルには理解されないのだろう。
「サボるなら他の所に行かないか、カノル。」
「嫌だね。もうほとんどの場所は執事長に知られてるからすぐに見つかるし、ここならお前っていう話し相手がいるから少しは気が紛れるし最高じゃんか!」
ゲイルは再びため息をついた。
カノルとの初対面は最悪だったものの、今では和解し仲間として認めている。ただし、こう毎度毎度サボるために利用されたのでは一溜りもない。万が一自分がカノルのサボりに加担していると思われればドストミウル様の信頼も薄れかねない。
「カノル、お前は我が怖くないのか?私はお前を殺そうとしたんだぞ。」
「怖くねーよ。あのなぁ、毎日バケモン見てりゃ大概のもんは怖いなんて思わねーの。そうやって無理に追い出そうとしたって無駄、もう少ししたら飯の時間だから出てくよ。」
ゲイルは例のごとくため息を吐いた。
「そーいやゲイルって昼間もいるの?」
屋敷のアンデットは基本的に昼間は姿を消す。ただ、ドストミウルや執事長など上位のアンデットは昼間でも動ける者もいる。ゲイルは地下のダンジョンの番人だ、誰がいつ来るかも分からない、故に昼でも動けるのではと考えたのだ。
「ああその通りだ。我は昼夜構わず行動が可能だ。ちなみにドストミウル様のように人の姿にもなれる。」
「おおっ!まじで!変身してくれよ!」
「...見世物ではないんだが。」
「勿体ぶるものでもねーじゃん、早く!」
ゲイルは渋々姿を変えた。
その姿はカノルと年格好の変わらないくらいの黒髪の青年になった。長身で目つきは鋭く、黒い鎧を纏った姿は闇をまとった騎士のようだった。
「はあ〜かっけぇじゃん!」
「ドストミウル様に比べたら未熟なものだ。」
「な、触ってみてもいい?」
「へっ、な、何故だっ。」
「ちゃんと人間感あるのかチェックだよ。ドストミウルにもしたからどっちがまともか見てやるって。」
俺が近づくとゲイルは1歩後ずさったが、もう一歩近づくと諦めたように体に触ることを許した。
まずは肩に手を置く、腕を掴んで、手を握る。だが、鎧に包まれた体は触っても感触がよく分からない。
次に無防備な顔を触ろうと頬に触れる。人並みに柔らかさのある頬、耳、鼻も少し摘むとゲイルは目を閉じた。最後に唇を指で押してやると、何故かゲイルは顔を赤らめて後ろに下がった。
「...なんか、ドストミウルより完成度高いな。あとちゃんと暖かいし。」
俺が考えているとゲイルはいつの間にか人の姿をやめて元の姿に戻っていた。
「鎧って脱げねーの?」
「もう触れるな!」
「...分かったよ。んじゃもう飯になるから帰るわ。またな、ゲイル。」
気分を損ねてしまったようなので、今日は大人しく帰ることにした。呼吸はしてたような気もするけど、心臓が動いてたかは確かめられなかったからそれはまた今度にしよう。
カノルが去った後、ゲイルは独り平静を取り戻そうと立ち尽くしていた。
長い間一人でいたせいか、あんなふうに他人に触れられる事に体が驚いたのだ。ただ、それだけの事。
珍しそうに自分の顔を覗き込んでくるカノルの無邪気な瞳がしばらく脳裏から離れなかった。
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