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吸血トランス!?③
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ドストミウルは自宅に着くと、カノルをいつものベッドに寝かせた。カノルは眠そうに目を細めるものの眠りにつくことは無く、ドストミウルの方をじっと見つめていた。
「カノル...気分はどうかね?」
「いいよ、アンタにこうやって世話されるの好きだし。」
いつもと違うカノルの様子にドストミウルは違和感を感じながらも、素直なカノルの言葉になんとも言えない嬉しいもどかしさを覚えた。
「休むといい、カノル。君は今ギャリアーノの吸血のせいで混乱しているのだ。」
「俺が眠るまでこうやって隣にいてくれる?」
上目遣いでそう言われ、ドストミウルは疼くものを感じた。今のカノルは本調子ではない、とはいえその姿に愛らしさを感じずにはいられなかった。
「そうだな、隣にいよう。」
「ドストミウルはいつも仕事忙しそうだから無理は言えないけど...やっぱり一緒に寝られると嬉しいんだぜ。」
「そうか、これからもそう出来るよう努力しよう。」
今のカノルは非常に素直だ。その言葉が嘘か本当かは分からないが、日頃聞けない本心も素直に言ってくれるかもしれない、そんな思いがドストミウルの脳裏を過ぎる。
「カノル、君は...その、私の事を...」
「ずっと一緒にいて、ドストミウル。」
カノルの声色が変わったのに気がついてその顔を覗き込むと、いつの間やらカノルの瞳からは大粒の涙が流れていた。
「カノル...どうした。」
「俺...ココを追い出されたら行く所なんて何処にもないから、人間の街になんか帰れないし、家族にも会えないし、ほんと死ぬだけなんだよ。俺はきっとアンタに失礼な事ばっかりしてると思うけどさ、一緒にいて楽しいのは本当だし、ずっと一緒に居たいって思ってるのも本当だよ。だから、見捨てないで...」
「カノル...」
思えばカノルは単身でアンデッドの世界に不本意のまま迷い込んだのだ。初めの頃は周りは全て敵であったにもかかわらず、気丈に振舞い続け今では皆に慕われる仲間だ。
それでもアンデッドの中に、たった一人異種族として暮らす事が彼の心の底でどれだけ不安だったのだろう。彼の飄々とした態度になんの不安もないのだろうと安易に考えていた自分にドストミウルは少しだけ後悔した。
混乱で浮き彫りになった不安にカノルは今飲まれている。
ドストミウルは震えるカノルの体を強く抱き寄せた。
「安心してくれカノル、私は何があっても君を見捨てたりはしない。君が死ぬその瞬間まで君と共に居ることを誓おう。」
「...怖いんだ。昼間に目を覚ます度、音のない部屋でアンタまで帰ってこなかったらどうしようって、夜になってもみんなが動かなかったらどうしようって思うと...不安で不安で仕方なくて。」
カノルはまだとめどなく涙を流していた。
「こんな時くらい、忘れられたらいいのに...」
「...カノル。君の今の鼓動は悲しい音をしているだろうか。」
ドストミウルはカノルの顎に手をかけると自らの口の部分をカノルの唇に軽く触れさせた。
「今夜だけでも忘れさせてあげよう。」
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