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悪夢にうなされて
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今日も心臓が張り裂けそうなほど苦しい夢を見る。
行きどころのない世界、どこを見渡しても誰もいない、首をつられて宙ぶらりんのまま俺はもがき続ける。
身体は動かない、息も出来ないのに打開する術を俺は知らない。
声も涙も出ないまま、俺は干からびてゆく...
目が覚めると汗だくだった。
呼吸は酷く荒れていて、心臓がうるさいほどに激しくなっている。
俺は背中を丸めて震える体を強く抱きしめた。
こんなことはよくあるのだ。
この感覚に慣れたとは言い難いが、まあ大体の対処の仕方は分かっている。
身体の震えがおさまるのを少し待って、落ち着いてから体を起こす。足が震えていなければベットから出て、少し水でも流し込む。
ソファーで横になってぼーっとしていれば気持ちも少しづつ落ち着いてくる。
ドストミウルがいればもう少し対処が楽だ。
でも、今日は姿が見当たらなかった。
基本的にこうなったらまたしばらくは眠れない。くだらない考え事で気を紛らわしているうちに夜が来て、いまいち冴えない頭のままモップを手に取り仕事になるだろう。
仕事が嫌とは思わない、こんな時はそれよりも早く夜が来てくれればいいのにと切に願う。
どんなイカれたアンデッドでも、居てくれないよりはマシだ。
今は昼間だ、アンデッドはみんな眠りについている。
こうやって孤独で居る時が一番キツい。
この間悲鳴をあげて起きた時はドストミウルが隣で寝てたから、すぐに寄ってきてくれた。その胸を借りて不安と恐怖を流し出すように泣いた。
冷たい体に身を寄せて、頭を撫でられていたらいつの間にかまた眠れていた。
ドストミウルはよくカウンセリングを進めてくるが、こう何度も何度も悪夢を見る俺の精神は確かにどこかぶっ壊れているのだろう。
それを何となく嫌だからと言って拒否し続けている俺はドストミウルよりも遥かに幼稚なんだと思い知らされる。
ソファーで横になっていると眠気に襲われたが、悪夢を見たくなくて精神がそれを拒んだ。重い瞼を無理やり押し返しては、気がつくと一瞬意識が飛んでいて、怖くなって覚醒を手繰り寄せる。
誰もいない部屋で何度も何度もそれを繰り返す地獄みたいな時間だ。
幾度かめの眠気に引き込まれそうになっている時、ドアの音で目を覚ました。
視線を向けると人の姿をしたドストミウルが部屋に帰ってきていた。
何も言わずに横になっている俺の前に来ると、脇を抱えて起こし強めに抱きしめてくれた。
「また、眠れなかったのか。」
「うん、いつもの事だろ。」
俺も腕を回してドストミウルに強くしがみついた。
「怖かったかね。」
「...少し...寂しかった。」
ドストミウルは腕を離すと、俺の頬に手を触れて唇を重ねてきた。
冷たい舌が俺の口の中を慰めるように撫で回す。くちゅりと音を立てて舌を柔らかく吸い上げられる。
それからしばらく唇を繋いでいた。
俺は抵抗することも無く、ドストミウルの体に手をかけて彼を感じる。気持ちいいとか、興奮するとかじゃなく、恐怖で冷え固まった頭の中が溶かされてふわふわするように温まっていく感覚が溢れていく。
ああ、帰ってきてくれて良かったな、と俺は心底安心していた。
長い時間触れていた唇を話すとドストミウルは優しく頬を撫でてくれた。
「一緒にまた眠ろうか、夜まではまだ時間がある。」
俺が頷くとドストミウルは抱き上げてベットまで連れていってくれた。ドストミウルもすぐ隣に寝そべり、頭を撫でてくる。
「あのさ、もう1回その...」
俺が口ごもるとドストミウルは優しく微笑んだ。
「ああ、眠れるまでキスしてあげよう。」
そうやって頭の中まで全部溶けそうなキスを何度も何度もした。
分かってるさ、俺はどうかしている。
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