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鉄の証なんていらない③
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それから俺達はゆっくりとフィンロウを満喫してから帰路についた。
帰りはあのボロ宿のある町を通るのはやめて違う道を通り帰った。
日が暮れる頃に屋敷につくと、使用人達が出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ、旦那様。」
「ご無事で何よりです。」
「執事長様お疲れ様でございました。」
口々にそう言うと皆頭を垂れた。
「出迎えご苦労、私は部屋に戻る。カノル行こうか。」
馬車から降りようとする俺の手をみんなの前で取ろうとするから、不機嫌な顔で返してやった。
「俺はゆっくり戻るから先に飛んでけ。」
ドストミウルは手を引っ込めるとアンデッドの姿に戻り、言われた通りにふわりと飛んでいってしまった。
使用人達が散り散りに持ち場に戻ろうとする中、俺はゆっくりと馬車を降りた。
そこに一人だけ残っていたメイドが駆け寄ってきた。ダティアリアだ。
「おかえり、カノル!ねえどうだった?楽しかった?」
「ただいま。どうって事はねえけど、まあ珍しい所だったよ。」
「場所の事じゃなくて...その、旦那様と何か進展は?」
そんなアリアの期待の眼差しに、俺は気だるいため息を返してやる。
「そう言うつまんねー話はまた後でな。」
そう言ってアリアを払うように手を振ってやる。
アリアはその手を見て少しだけ目を見開いた。
「うん、分かった!また後でじ〜っくり聞かせてね。...おめでとうカノル。」
なぜかとても嬉しそうに照れ笑いを浮かべるアリアを横目に見ると、こちらまで照れくさくて目は合わせられなかった。
部屋に行けば屋敷の番をしてくれていたイフがいるはずだ、またからかわれるだろうか。そう思うと憂鬱だったが、こうなってしまったものは仕方ない。
俺は一つ指を失ったが、大切なものを得た気分だった。今までとは大して変わらない生活が続くんだろうが、それがきっと大切な事なんだろう。
違和感の残る左手を俺は強く握りしめた。
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