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桜舞う
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「じゃあ、これで全てになりますんで」
俺は進むトラックをぼんやりと見つめた。
これで、全てなくなった。
マンションも引き払い、家財道具も全て引き取ってもらった。
残ったのは、この小さな鞄だけだ。
「まぁ、いいか。どうせ後は死ぬだけだ…」
空に目を向けると、
鮮やかすぎる青が、一面に広がる。
そこに桜の花びらが風と共に舞うと
青がまた一段と鮮やかを増した。
正直、桜は嫌いだ。
嫌いというより、あの日からずっと避けてきた。
しかし、こうやって
桜を目にするのも最後なのかと思うと、
それは、愛しいような、切ないような
ほろ苦い想いとなって、
俺の心に蘇る。
「…さっ、行きますか」
俺はほろ苦さを胸の奥底にしまい込み蓋をした。
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