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死神先生、人と会う【1】
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息切れ。動悸。吐き気。目眩。
1人の青年が、酷く怯えた顔で走っていた。
軽く後ろを振り返り、すぐ横の細い路地に逃げ込む。
ゴミ捨て場の物陰に身を潜めると、激しい息切れを覆い隠すように口に手を当てた。
「クソ!どこに行きやがった!探せ!」
「久しぶりの“迷い人”だ!とっ捕まえて裏オークションに出すぞ!逃がすな!」
青年が横目で声のする方を見ると、大きな爪を持った男や獅子の頭を持つ男、羽を生やした男など、面妖な姿をした集団が通り過ぎて行くのが確認できた。
しばらくして辺りが静まり返ると、青年は緊張の糸が切れたようにへなへなとその場に座り込んだ。
「…何で、こんなことに」
震える声で呟いた。
とりあえず、追っ手から身を隠せる安全な場所を探さねばならない。青年が立ち上がろうと、顔を上げたその時だった。
「君」
「…っ?!」
青年は驚きのあまり、声が出なかった。先程まで誰もいなかったはずの目の前に、今日一番の不可思議な生き物が立っていたのだ。
全身をすっぽり覆う真っ黒のコート。足や手は黒い霧のようなもので隠れている。顔は尖ったくちばしのような形をして、小さめの金色の瞳がついていた。そして、一際目立つのは形の違う2本の角だった。右は羊のように丸まった大きい角。左はトナカイのように鋭利で長い角だった。
その生き物の纏うオーラは、青年の身体を動けなくするには十分すぎる程の圧力を持っていた。
「君、人間だね」
「あ……ぁ…」
ガタガタと全身が震える。
目の前の生き物は、彼を人間だと理解したのか、ゆっくりと手らしきものを青年に近づけた。
自身の頭を握り潰せるほどの大きな手が迫るのを感じ、青年は思わず目を閉じた。
バサリ。
「……………?」
「これ、着なさい。その格好ではすぐに人狩りに見つかるよ。私で良ければ匿ってあげよう。着いておいで」
青年は恐る恐る目を開けると、黒いフード付きのコートがかけられていた。
驚いて目の前の生き物を見ると、謎の生き物は既に歩き始めていた。
青年は、このまま着いていって良いものか迷っていたが、これ以外の道はないと悟ったのか、慌ててコートを見にまとい、大きな真っ黒の生き物の後を着いていった。
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