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7話「呼ばれた」
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日曜日。
いつもなら、暇になった宮崎から「そっち行っていー?」だの、「今なにしてんのー」だの。たまに、電話だの。
そうやって構ってほしいという連絡が来るのに、それが来ない。
何もする気が起きなくて、バイトも休みで。
だから机に向かって英語の勉強中。
ぼんやりと、ぼんやりと。なんとなしに寂しい今の状況と、きっと今日が、この間救馬から誘われた「合コン」の日なのだと理解してしまって、余計に寂しくなった。
「・・・みや、ざき」
名前を呼んでも返事何かある訳が無い。
ああ、どうしてあの時、「行ってやりゃあ良いじゃん」なんて、軽口で言ってしまったのか。
今想えば、宮崎は傷ついたんじゃないのか。
だって、アイツは、俺を好きと言ってくれているんだから。
好きな相手からそういう、どうでもいい、みたいなことを言われたら傷つくんじゃないのか。
グルグルグルグル。
思考が回って、自分を追いつめて行く。
「はあ、ダメだ」
人が理解できないと言うのはとても苦しい。
椅子を引いて立上がって、気晴らしに外に出ようと家の鍵と財布を持つ。
この間たくさんつかったせいで牛乳がなくなっているし、何だか甘いものが食べたい。
コンビニまでさっさと歩いてしまおう。
混乱した頭を冷やそうと外に出ると、案外蒸し暑い空気が身を包んで来た。
「ふぅ」
溜息をついて。
ドアをしめ、鍵をしめて歩き出す。
コンビニは少し歩いた所にあるから比較的に行きやすい。履いたサンダルが脱げないようにと気をつけて歩きながら道路へ出ると、更に照り返しで熱い。
(・・宮崎、どうしたろ)
メアドとか、俺の知らない女の子と交換してるんだろうなあ。
そう考えると悲しいものが少しある。
(俺の知らない女の子と笑いあってるのかな)
そう考えると残酷なものが少しある。
「・・・」
けれど、きっと宮崎の周りを囲んでいるであろう彼女達と違って。
自分は男で、その上アセクシャルだ。
一生アイツの心に応える事は適わない。
(だったら、)
だったら、今、そこにいるのなら。
好きになれる女の子を見つけた方が、宮崎のためになるのだろう。
ギャリ、と砂利を踏む。
熱くなった陽射しが降り注ぐ中、道路の端、白線のすぐ横を歩く。
「・・・」
宮崎。
宮崎。
自分が望んだ通り、半端で心地のいい関係のまま三年生になった。
将来を決める時期。
未来を見据える時期。
宮崎は、どうしたいんだろう。
俺とこのまま進む?
それとも、
俺から離れてしまう?
「付き合う」「恋愛」「恋人」
そういう契約みたいな関係がない限り、俺は宮崎がいきなり目の前から消えても文句なんて言えない。
言ってはいけない。
逆もしかりだとしても、俺はとてもワガママだろう。
アイツの望むような関係になれないっていうのに、俺はアイツに見捨てないでほしいと言ってしまった。
こんなうやむやな関係で、本当なら宮崎だって新しい道へ進めるって言うのに。
俺はそれを引き止めてしまっている。
「・・わからない」
ワガママなのは知っているけれど、それでもアイツの手を放せない。
怖い。
怖いんだ。
初めて愛せなくても必要だと言ってくれた相手が、俺の傍から消えてしまうのが。
「あーいーくん」
「ッ・・・え?」
突然聞こえた声。
視界にさした黒い影。
その呼び方は、もう何度もやめてほしいと言ったのに。
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