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20時30分35秒。
部屋中に一定のペースで刻まれる秒針の音が響く。
いつもならもう家に帰ってくるはずの時間なのにレトルトが帰ってこない。
別に今までもこの時間にいないことだってあった。
ただ最近のアイツは何だかおかしい。
ぼーっとしてるときが増えたし、俺と目を合わせるのを
避ける。
そして何が1番おかしいかって...
「ただいま〜」
ガチャりと音がして玄関が開く。
「おかえり、寒かっただろ。」
「うん。めっちゃ。」
そう、この作られたような笑顔。
いつものような無邪気に笑うレトルトじゃない。ただひたすらに笑わなければ、笑っていなきゃとも言わんばかりの偽造された顔。
「ひゃ〜はよ温まらな」
レトルトは顔を変えないようにと気をつけながらマフラーを外し、俺の横を足早に通りリビングへと向かった。
その時に分かった。
他のやつの匂い。体に染み付くほどのαの匂いが。
首の噛み跡に上書きされた俺の知らないキスマークが。
上等じゃん。
レトルトは俺のだっての。
他の誰にも渡さない。俺だけのレトルト。
心も体も全部俺だけのモノ。
絶対絶対渡さない。
俺は心の中でそう思い、今はまだ暖かい部屋へと向かった。
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