アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
0 神託
-
血色の霧が思考を遮る。
記憶の輪郭が歪み、何故ここに自分がいるのか思い出せない。
ひび割れた大地を踏みしめ、足は前へ前へ、行き先もわからぬまま止まることを怖れて先を急ぐ。
息を吸うだけで、死肉の焼け焦げる匂いと熱気に噎せそうになった。
不安で気持ちが押し潰される。
自分の周囲には、諦めと悔しさと怒りと哀しみを未だに淘汰出来ずに歪んだ表情で歩く人の姿。
足取りは重く、頼りない。
それでも進むしかないのだと無言で前を向く。
いつまで、いや、どこまで進むのだろう。
その答えを探すより早く、大地が唸り大気が震えた。
「殺戮王が来たぞーーっ」
「逃げろっ、とにかく逃げるんだっ」
「これ以上、どこに?!」
「もう、無駄だ・・・」
「誰もあの王を止められはしないっ」
馬の嘶き、悲鳴と怒号。
迫る恐怖に耐えきれず、一人また一人、足を止めてその場に崩れる。
そうだ、無駄だ。
自分も足を止め、来た道を振り返る。
荒れ果てた大地が火を吹き、風は唸りをあげて炎を天高く舞い上げる。
この焼けた大地のどこにも、行く当てはない。
なぜなら・・・
「ぃっっ」
いつもの朝を迎えるよりも早く飛び起きた。
咄嗟に口を抑え、悲鳴を飲み込む。
尋常ではない速さで打ち鳴らす心臓、身体ごと破裂して粉々に砕けそうだっ
無意識に震える身体、止まらない冷や汗。
ただの夢で終わらせるには、あまりにもリアルな感触があった。
まるで・・・
「ぅっっっ、うわあぁああああーーーーーっっ」
口元から離した掌に目をやり、その血塗られた色と刻まれた聖痕に絶叫する。
夢と現の狭間で、自分に託されたのは何だったのか。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 6