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「陸、これ、なんだとおもう?」
ルイがあどけなく丁坂に訊いた。ルイは服の襟を引っ張り、小さく残る丁坂の噛み痕を晒した。
丁坂は戸惑った。
「……さあ、なんでしょうかねぇ? 虫にでも刺されたのでは?」
適当を言って丁坂は誤魔化した。
「そう? こんなの初めてだ……。どうしたら治る? 早く、早く治さなきゃ。お人形のように、いなくちゃ」
「時間が経たなきゃ治りませんよ、ルイ様。今日こそ、採寸するんでしょう? 早く終わらせましょう?」
丁坂はそう話題を逸らした。
「そう、じゃあ早くして。傷を隠す美しい服を作ってよ。ほら、今日こそちゃんと脱がせてよ」
自分で言い出したものの丁坂は少し躊躇ってルイの服のボタンに手を掛けた。冷たい二人の肌が微かに触れ合い、少し丁坂は気まずく思った。
「別にいいよ陸。そんなことで動揺しないでさっさと測ってよ」
そんな丁坂の動揺に気付いたのか、ルイはそう言ってクスクス笑った。肌とドレスが擦れ合う音がする。ルイの真っ白で細い上半身が露わになった。ルイは両の腕をすっと上げ、丁坂に促した。
「ほら早く」
丁坂はメジャーを取り出して、スルスルと伸ばす。腕をルイにまとわりつかせるようにして胸囲を測った。
「んっ、」
ルイが微かに声を出す。胸にまとわりつくメジャーはルイの胸の上の二つの突起を刺激しているようだった。丁坂は気づかないふりをして、メモを取った。それから胴囲や座高、腕、脚を測る。
時々上がる、ルイの声。
胸に燻る興奮を抑えながら、丁坂は何食わぬ顔で採寸を済ませた。
「ルイ様、お仕舞いです。ありがとうございました。ドレスお作り致しますから、生地を選んでいただけますか?」
ルイは頷いて、それから丁坂に早く服を着せるよう言った。背中側のボタンをもう一度丁寧につける。ふわふわとした黒いレースがルイの白い首筋や脚を隠す。
着せられ終わるとルイは、解放されたかのようにぴょん、と立ち上がって、部屋の奥の扉を開けた。
そこには、色とりどりの生地があった。素材も様々だ。丁坂がメジャーやノートを仕舞っている間に、ルイはその煌びやかな生地達を吟味した。天鵞絨やレース、サテンにシルク。様々な生地に様々な色や模様。
「そうだね、今度は白にしようかな」
薄手のレース生地をルイは手にとった。
「それじゃ、ネグリジェですね」
「そうなの?なんでもいいや。これがきれいだと僕が思ったから」
「出来上がりましたらお持ちしますね、ルイ様」
丁坂はそうやってにっこりと笑った。
「ありがとう、陸」
ルイは笑い返し、部屋を出た。
バタン。
ドアの音がして、丁坂は息をついた。そしてその興奮を掻き消そうと何度も、深呼吸を繰り返した。丁坂はルイに隠していることがたくさんある。ルイの両親の言いつけだってその一つだ。守らなければならない、でも、自分の中にルイへの想いがあるのは確かなのだ。
丁坂は血のワインセラーを開け、ボトルの栓を抜いた。
血を飲めば興奮状態に陥り易いのは分かっているが、それ以上に今の欲望を満たす事を優先した。丁坂は白い喉を鳴らしながらゴクゴクと血を飲んだ。嚥下の音とリンクするように上下する喉仏。丁坂は微かに聞いたあのルイの声を思い出していた。
空になった瓶を丁坂は手放した。それは床に叩きつけられ、小さな破片へと姿を変えた。
この想いを打ち開けたら、決してルイの両親との約束は果たせない。
日々日々大きくなる感情をどうやって隠せばいいのだろうか。
ルイには、隠している事が多すぎる。私には荷が重過ぎる。丁坂はそう思い大きな溜息をついた。
丁坂は気持ちを切り替えて、ルイの服を仕立てる事にした。
古びたミシン、真っ白なレース。そのコントラストがやけに目についた。
駄目だ、余計な事は考えちゃいけない。
丁坂はそう自分自身に言い聞かせた。
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