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0 摘むべき未来
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宗教国家ルクア。
大陸随一の武力と豊かな資源で潤うその国から人々の笑顔は消えていた。
首都ルクアールの中央に聳える白城の壁はくすみ、木々は枯れ果て静寂と死が深い影を落とす。
周囲を囲む街並みも錆びれ、通りを歩く人の姿もない。
城内、王の間。
君臨する年若き王アルスは、眼下で膝を折る兵士達を眺め、ルクア最期の良心と称される自国の将軍へ命じた。
「自分の首をはねろ」
再三他国への進軍を拒否する愚か者。
俺の飢えを満たすためには、血が足りない。
それを知らぬお前ではないだろう。
彼の前では息をすることさえ難しい。
何が気に障るかは気分次第。
「・・・はっ」
気持ちも言葉も届かぬ主へ、頭を垂れる将軍。
例えこの場で刃を向けようとも、王には神の御加護がついている。
何人も傷一つつけることすら叶わない。
将軍は拳を握り締め歯を食い縛る。
何人の民がこの王の命を狙い散っていったか。
そして、この王を今止めなければ何万の民が散っていくか・・・
背後の部下達もいずれ同じ目に合うだろう。
クソッ
将軍は床に拳を叩きつけると、王座へ向かって走った。
腰に下げていた剣を抜き、見える右目で標的を捉え、迷いを捨てその首目掛けて距離を詰める。
ルクアの未来のためにっっ
必死の形相で迫る刺客に、王は嗤った。
ボッ
王座へ繋がる階段の手前で、将軍の身体は赤い焔に包まれ呆気なく崩れる。
悲鳴すらない最期に震え上がる兵士達。
王は立ち上がり、命じる。
「さぁ、戦に励め、我兵よ」
この日を境に、ルクアの戦火は大陸全土を焼き払い、小さな島々にまで及ぶことになる。
殺戮王の誕生。
それは、未だ途絶えない未来のひとつ。
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