アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
9
-
カイに言われて、様子を見に来てみたというのに、なぜこうなっているのか分からない。
俺の頬はジンジンと痛み、乱れたシーツと、空っぽのベッド。
側室にも寵愛を、と言われたからわざわざ出向いたのに。
アリエルが今日は1人で眠りたいと言うから、まあちょうどいいか、とそう思って、来てやったのに。
なぜ、拒まれた?
あいつも、俺に触れられれば喜び、体調も良くなるのではと思ったのに。
「……国王陛下。何をなさってるんですか。」
「……お前の言う通りにしただけだが。」
「先程ルナ様が走って行かれましたが?」
痛い視線を感じる。
「知らん。」
「……まさかとは思いますが、何も言わずに乱暴したのではないでしょうね?」
「おなごでもないのに、なにか気遣う必要が?」
「……あなたは…いくらルナ様が気に入らなかったとしても、それは頂けませんよ。」
カイは呆れきってため息をついた。
「男でも、側室でも、そういったことをするならばそれなりの気遣いと、優しさを持つべきです。」
「……愛していなくてもか?」
「愛していないのになぜ側室に?」
キョトン、とするカイに、俺もポカン、としてしまう。
そうだ、なぜあいつを側室としてそばに置いている?
なぜ、だ?
アリエルがそばにおけ、と言ったからといって、側室にすることは無かったはずだ。
「……いや、今のはあいつの話じゃなく、例えばだ。」
「愛していない者とそのような行為を?それはこの国では……かなり、叩かれるかと。」
「…そうだな、確かに。」
「だいたい、私はルナ様を側室として置く以上、ルナ様にもお時間を割くべきではと申したのであって、セックスをして来いとは言っていませんが?」
「……しかし、寵愛といえば、それだろう。」
「……エリック様、今まで自分のところに全く来ていなかった王が、突然やってきて押し倒されたら、普通は怯えると思いますが?」
それを言われては何も言えない。
「……はぁ、あいつはどこに?」
「東の塔の方に向かわれました。」
「東だと?あそこは、『アリエル』のために……」
そう言ってから、違和感を覚える。
アリエルのために作ったのは、今の部屋ではなかったか?
花をたくさん飾り、豪華な装飾をしたあの部屋だ。
東の塔の部屋は、『誰』のために作ったんだ?
アリエルじゃないなら、誰に?
「……いや、なんでもない。行ってくる。」
東の塔に向かって歩く間も考えたが、結局よく分からないまま。
部屋の扉は半分ほど開いていて、そこから中を覗いた。
すすり泣く声。
窓から差し込む月明かりに照らされたブロンドの髪。
ベッドの上にたくさん散らばった花びら。
何故かわからないが、胸がズキズキと痛んだ。
「っ、ぅ、えりっく、エリック……」
そして聞こえてきた声に、ドクン、と心臓が跳ねる。
一瞬、自分が呼ばれたと思った。
でもこいつは、俺を名前で呼んだことは無い。
ということは、別の『エリック』なのだろうか。
湧き上がってきたモヤモヤとした黒い感情。
これは一体、なんなのか。
結局、声をかけることは出来なかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
10 / 85