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「アリエル……」
「んっ、ま、って……やっぱり、こわい…」
そう言って顔を背けると、優しく抱きしめてくれる。
「……やめるか?」
「っ……やだ……」
泣きそうな声が出る。
やめたくない。でも怖い。
どうしたらいいか自分でも分からなかった。
「アリエル、こっち見て。」
「……エリック…ごめん……」
「大丈夫、ほら、俺見て。」
海色の瞳と視線が絡まる。
「俺に全部委ねて。痛いことはしない。大丈夫、大丈夫だ。」
安心する声。
温かい手。
優しい、キス。
「愛してる。」
とろけるような甘い言葉。
幸せな時間-。
「っ、夢……」
目が覚める。
ヴァネッサが来る前の頃の、夢だった。
窓から差し込むのは太陽の光に変わっていた。
もう、朝。
ベッドの上には大量に花びらが散らばっていた。
「……はぁ、困ったな…」
これをどう処理するか。そのうち消えるとは思うが、その前に誰かが来たら困る。
というか、ディランにもカイにも何も言わずにここに来てしまったけれど、怒られるだろうか。
そこまでは、気にかけてもらえないか。
「あっ!ルナ様、やっと見つけた!!」
聞こえた声にビクリと肩が跳ねてしまう。
「き、キャンディさん……」
「申し訳ありません、驚かしました……?」
「あ、大丈夫です。」
「カイ執事長とディランが探していました。なんでも、お届け物があるんだとか。」
「お届け物?」
「はい!早く参りましょう!」
キャンディに手を引かれて、塔を出る。
「ワンっ!」
「……え?えっ、え、まってまってまっ、うぉぁ!!」
ドン!と勢いよく床に倒れ込む。
「……おや、随分と態度が違いますね。」
「気に入ったんじゃないんですか。」
状況がよく掴めないまま、カイとディランの会話を聞く。
「ワンっ、ワンワンッ!」
「……サモエド…?」
ふわふわの白い毛並みと、愛らしい顔。
すっごく可愛い。
でも、なんでこの城に?
「国王陛下からの贈り物でございます。」
「え、国王陛下が?」
「はい。」
「……受け取れません。」
サモエドをそっと自分から離し、立ち上がる。
「他の人に……女王陛下に差し上げてください。」
「お待ちください!」
止めようとするカイの声を無視し、踵を返す。
自分の部屋に戻って、ベッドに身を投げた。
すごく可愛かった。
でも、エリックからの贈り物なら、貰えない。
「……はぁ………っわぁぁ?!」
「ルナ様?!」
慌てて飛び込んできたのはディランだ。
「……な、なんで、お前……いつの間に。」
「あぁ……その子なら、すぐにルナ様の後をついて行ってしまったので。」
ぺろぺろと俺の手を舐めているのは、先程のサモエド。
「私やカイ執事長の前では、いい子にしてはいましたが、しっぽを振ることはありませんでしたよ。」
甘えるようにこちらを見上げて、しっぽを振っている。
うっ、可愛い……
「受け取っては?この犬のためだと思って。」
「…………わかりました。」
そうだな、この子に罪はない。そうだ。
さすがにヴァネッサだって、この犬にどうこうはしないだろうし、うん。
サモエドは、サンディーと名付けた。
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