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私は、今まで何をしていた?
『アリエル』様に無礼な口をきき、無礼なことをし、あろうことか『彼』を追い詰め、あんな状態になるまで放置した。
エリック様とアリエル様を傷つけ、この城を襲った魔女をのうのうと生かし、その方を敬っていた。
なんて、ことを。
私は、私は……なんということをしてしまったのだろう。
「カイさん?」
名前を呼ばれ、我に返る。
「……大丈夫ですか…?顔色悪いですよ。」
アリエル様の手を舐めているサンディーを好きにさせつつ、視線をこちらに向けられる。
「カイ、と……お呼びにならないのですか?」
「……え?敬語は大目に見てくれるって…」
「……どうか、お呼びください。『アリエル』様。」
目を見開き、固まるアリエル様。
サンディーが、手を舐めるのをやめた。
「……あ、……え…」
大きな緑色の瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちて、それはすぐにダイヤモンドに変わった。
「か、い……」
「っ、はい、アリエル様。」
「カイ……」
「はい、アリエル様っ。」
「……かい、カイッ…!」
次々に零れる涙は、たくさんの宝石に変わっていく。
「ぅ、っ……か、い……カイぃっ……」
「アリエル様っ……数々の無礼……貴方様を……お優しい貴方様をたくさん傷つけ、追い込んでしまったこの罪…死んでも償えません。」
アリエル様の前に跪き、頭を下げる。
「どうか私を……怒ってください。」
アリエル様が泣いている今、怒りの感情が篭ればどうなるか。
もう、今の私はきちんと理解している。
「カイ……かい、こっち、見て。」
アリエル様にそう言われ、顔を上げる。
「怒るなんてこと、しないよ。今、すごく、うれしい……っ…」
「っ、アリエル、さま……」
「俺のこと、わすれて、なかったっ……おれ、おれっ、が……」
「ーーーーッ!」
私は、本当に、なんてことをしたんだろう。
こんなにも優しく、美しい方を、あんなに苦しめてしまった。
「っ、申し訳っ……ありませんっ……!」
「もう、いい……いいんだっ……カイが、俺を、おぼえててくれた…それだけで、いいの。」
柔らかく微笑むこの方こそ、『アリエル』様。
我々の、王妃。
「今すぐ、エリック様のところに参りましょう。きっと、話せばわかってくださいます。」
そう言って、アリエル様の手を取った。
ところが。
「だめ!」
パシンっ、と弾かれた手。
地面に零れていた宝石が、色を失い、消えていく。
アリエル様が、別の感情に支配され始めている。
「……ダメ、だ。」
「アリエル様……?」
「エリックに……話すことは出来ない……ううん、エリック、以外にも……」
俯くアリエル様に、手を伸ばす。
その手の甲に、ポツリと冷たい雫が当たった。
先程までの美しい夕焼けは消え、暗くどんよりとした空に変わる。
そして、冷たい冷たい雨が、降り始めた。
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