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「話せない……」
「なぜ、です?もうこれ以上、あなたが苦しむことは……」
「……ヴァネッサは…特別な魔法を、かけたんだ。」
「……特別な、魔法?」
「自分で、洗脳を解ければ、カイみたいに元に戻れるけど……もし、俺が真実を伝えたことで、洗脳が解けても……元には、戻れない…」
「どういうこと、です?」
「俺が真実を伝えたことで、洗脳が解けても、翌朝にはまた洗脳される。ループ、する。」
「……そんな…」
「それに、もし、ループしたら……また、カイもっ……」
アリエル様の瞳が揺れる。
雨雫に紛れて、ぽたりと落ちた涙は、何にも変わらなかった。
アリエル様は、恐れている。
失うことを、何より恐れている。
「……自力で、思い出せば、良いのですね?」
「……へ?」
「我々が話すことはせず、自力で思い出せば。」
「は、はい。」
雨に濡れてもなお、隣に座って待つサンディー。
この子は、何もかもを見抜いていたのかもしれない。
だから、アリエル様の歌が好きで、その歌を歌わせ、私たちに気づかせようとしてくれたのかもしれない。
エリック様にも、同じように、アリエル様との思い出を思い出させれば。
「アリエル様。」
私より小さなアリエル様を、雨粒から庇うように立つ。
「私の名前は、カイでございます。」
「は、はい……」
「カイとは、西洋の言葉で波止場、という意味です。」
波止場は、船が休む場所。
波から、陸を守る場所。
「私に、預けてはいただけませんか?」
「か、い……」
「私が、あなたをお守り致します。」
「ーーーッ、カイっ……」
「初めから、やり直しましょう。」
「……やり、なおす……?」
「そうです。あなたが、この城に来た時から。やり直すのです。」
アリエル様がこの城にやってきて、エリック様と無事恋人になるまで。
様々なことがあった。
その全てが、エリック様の思い出の中に、残っている。
私は、それに賭ける。
「アリエル様、もう一度、恋をしませんか?」
「……恋、を?」
「エリック様と、出逢った頃のように。アリエル様のその優しさで、愛で、エリック様をもう一度、あなたに惚れさせるのです。」
「……そんな、ことが……できますか?」
「私が、全力でサポート致します。」
アリエル様の、波止場となる。
「私が、アリエル様の波止場となります。」
「っ、カイ……」
震えるアリエル様の手を、そっと握る。
この方の愛なら、魔女の力などに負けない。
「私に、寄りかかっていただけますか?」
アリエル様は、少し迷って、それから頷いた。
「さぁ、お体にさわります。中に、入りましょう。」
これからはもう、あなたはおひとりじゃない。
必ず、守り抜いてみせる。
エリック様の、真の幸せそのものである、アリエル様を。
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