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「アリエル様、お加減いかがですか?」
「ん……かい…?」
夜になってもアリエル様が起きてこない、とディランが言うので様子を見に来た。
朝見た時よりもしんどそうで、熱が上がってしまったようだ。
「お食事召し上がれますか?」
「……おかゆ…がいいな…」
「かしこまりました、すぐにご用意いたします。」
「カイ……」
「はい、どうかなさいましたか?」
「……あの、東の塔……いきたい…」
「……東ですか?体調が良くなってからになさっては……」
「星、みたい……」
東の塔、1番上にある部屋は、アリエル様のために、エリック様がお造りになった部屋だ。
星と海を一緒に見られるように、と大きな窓をつけ、その窓の近くに大きなベッドを置いた部屋。
アリエル様の好きなものばかりを集めた部屋だ。
季節ごとの花や、望遠鏡、いい香りがするお香。
それ以外にもアリエル様が大切にしていたものがしまってある部屋でもある。
そういえば、あの部屋のものは全て残っているのだろうか?
「かしこりまりました、お連れいたしますね。」
アリエル様を連れていき、確認しよう。
そう思い、アリエル様をそっと抱き上げて、部屋を出た。
「カイ執事長?」
「あぁ、この部屋では落ち着かないようだから、東の塔で休んで頂くことにした。」
当然、部屋の外でディランに不思議そうな顔された。
それを適当にごまかし、東の塔に入った。
「少し体が熱いですね。」
「……そう…?少し熱、上がったかも。」
アリエル様はそう言って、私に身を委ねてくれる。
本当は、エリック様にこうして身を委ねられればもっと楽なのだろうと思う。
けれど今は、私に頼ってくれるだけでも、まだマシだ。
「アリエル様、着きましたよ。」
「ん……」
アリエル様をベッドに下ろすと、後ろからついてきていたサンディーもその隣に寝そべる。
「……綺麗…眠れそう。」
「お粥を食べて、お薬を飲んでからにしてくださいね。」
「あはは……そうだね。」
途中で会ったメイドに、こちらに持ってきもらうよう頼んだから、じきにくるだろう。
アリエル様が食事を済ませている間に、軽く部屋を見て回った。
特に、変わったところは見当たらない。
なくなったものもないし、前の通りにのこっている。
強いて言うなら、花が枯れているくらいだ。
「新しい花をご用意しましょうか。」
魔女がここを襲ってきた冬の花のまま。
もう、秋を迎えようとしている。
「……ううん…エリックと一緒に……選ぶから…」
食事を終えてベッドに横たわるアリエル様は、ぼーっとした感じで、そう言う。
熱であまりはっきりした意識ではないのだろう。
「はやく……エリックと話したい…」
アリエル様はさらに言って目を閉じた。
元々、こういう弱っている時しか素直な感情を口にしてくれない方だ。
今のは、アリエル様の切実な願いだろう。
『国王陛下』ではなく、『エリック』様とお話したいのだ。
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