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いざ、前と同じようにしようと思うと難しかった。
どこにいても疎まれる今の俺は、前と同じようにするまでにたどり着かない。
「暇だなぁ、サンディー。」
「ワンっ!」
結局、サンディーと遊んで、庭に出て、少しカイと話して。
そういう1日が多いのが現状だった。
「これはいらないって言ったでしょ!!」
いつも通り、庭に出てサンディーと遊んだ後だった。
突然の怒鳴り声に驚いて、様子を伺う。
「申し訳ございません……」
謝っているのはコックのカーティスで、床には何かが散らばっていた。
「あ……」
それは、俺の大好きなジャムクッキー。
この時間にはいつもカーティスたち、コックさんが出してくれて、みんなと食べながら話した思い出がある。
その他にも俺の好きな菓子ばかりが床に散らばっている。
「『アリエル』様の好物をお作りしたつもりだったのですが……」
「そんなもの大嫌いよ!!!」
「申し訳ございません……」
「私の好みくらい、把握しておきなさいよ!」
すごい勢いでヴァネッサが怒鳴り散らす。
そりゃ、そうだよな。
それは俺の好物で、ヴァネッサからしたら、嫌なことに決まっている。
「もういいわ!お前はクビよ!!」
「っ、お待ちくださいっ女王陛下っ!」
俺は思わず、そう言って飛び出した。
「……なんなの。」
「そ、これは、その……俺が、彼に頼んで作らせた、もので……その、無理を言って作ってもらったので、彼は、悪くないのです。女王陛下にも、お出しするとは思わなかったのですが、俺の、落ち度です。」
なんとかカーティスを守りたい一心で、そんな嘘をついた。
と、次の瞬間、パシンっ!と乾いた音がして、頬がジンジンと痛んだ。
「今後、うちのコックにあなたから何かを頼むことは、許しません。私にも、近づかないで。」
「……はい、女王陛下。」
ヴァネッサは頭を下げる俺に水をかけて、それから立ち去った。
「クゥン……」
サンディーが濡れた俺を見て、心配そうに鳴く。
「ふふ、大丈夫、心配ないよ。」
サンディーをわしゃわしゃと撫でる。
「る……ルナ様…なぜ、私を……」
「俺が、あなたに頼んだんです。」
俺は振り返って、複雑な顔をするカーティスに微笑む。
「あなたは、俺が頼んだものを作っただけ。そうでしょう?」
「ーーーーッ、ルナ、様っ……」
ぎゅっと眉を寄せ、苦い顔をするカーティス。
カーティスには、たくさんお世話になった。
カーティスたちコックさんの美味しい料理と、紅茶に俺は幾度となく癒された。
だからこれくらい、なんてことないんだ。
「ア……ルナ様?!」
ちょうど通りかかったカイが、慌てた様子でこちらにやってくる。
思わずアリエルって、呼びそうになってるし。
「どうなさったのです?カーティス、これは?」
「カイさん、向こうで話しましょう。」
「しかし……」
「彼らに落ち度はありませんよ。」
「……かしこまりました。カーティス、お茶を。」
「……ッ、はい。」
カイに行きましょう、と促され、部屋に向かう。
「……あ。」
その途中で、振り返る。
「そのクッキー、余ってたら、食べたいです。」
「……ッ!もちろんでございます!」
ヴァネッサが来て初めて。
カーティスが俺に笑ってくれた。
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