アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
18
-
「びしょ濡れではないですか。せっかく風邪が治ったというのに……」
部屋に着くなり甲斐甲斐しく世話を焼かれる。
「着替えてくださいね。」
「大丈夫だよ、もうすぐ入浴だし……」
「いえ、お着替えなさってください。」
有無を言わせない目付き。
俺は仕方なく頷いて、着替えを貰う。
「……ってこれいいやつじゃん。こんなのいらないって…」
「良いのです。貴方様がアリエル様だということを示すためにも、今後はきちんとした服装を。」
「……それは、わかるけど。なんでドレス?」
「ふと、思い出したのです。貴方様が片思いなさっていた時には、ドレスを着ていたな、と。」
懐かしむような微笑みを浮かべるカイ。
確かに、そうだったけど、今は別に、ドレスじゃなくてもいいんじゃないだろうか。
「それに、その色は、貴方様によくお似合いです。」
エメラルドグリーンのドレス。
俺の瞳と同じ色。
「お手伝い致します。」
ドレスを着る時は、そういえばいつも手伝ってもらってた。
久しぶりに身を通したシルクの生地。
なんだか、変な感じ。
前は、エリックにドレス姿も見たいから、と言われて1週間に何日かはドレスだったのにな。
「……終わりました。」
「久しぶり……変じゃない?」
「よくお似合いです。」
ふわりと裾が揺れると、足首につけたアンクレットが見える。
このアンクレットは、元々俺の髪飾りだったもの。
エリックと気持ちが通じあった時、エリックがアンクレットにしてくれた。
その時からずっと、毎日つけている。
「そのアンクレット。」
「へ?」
「私の記憶の中に、強く残っていたようで、それを見た時に貴方様との思い出が蘇ってまいりました。」
そうだったんだ。
エリックも、覚えてるかな。
「きっと、エリック様も覚えておられますよ。」
「そう、かな。」
「はい、きっと。さぁ、お掛けになって、お休みください。またあの魔女に嫌なことをされたのでしょう?」
カイに促されて椅子に座る。
ちょうどそのタイミングでドアがノックされた。
「はい。」
「ルナ様、ディランです。カーティスが頼まれたものをお持ちした、と。」
「通して。」
「ルナ様、お待たせいたしました。紅茶とクッキーをお持ち致しました。」
「ありがとうございます。そこに置いてくださいますか?」
「かしこまりました。」
カーティスの料理を口にするのは久しぶりだ。
ヴァネッサが来てから、俺が食べていたのはカーティスではないコックさんが作ったもの。
カーティスは王族専属のコックだから、カーティスの作ったものを食べる権利は、側室の俺にもあったのだけど、ヴァネッサが断っていた。
そのせいで、俺はコックさん達とも話せなくなってしまったのだ。
「…今食べても?」
「はい、もちろんでございます。」
ジャムクッキーを、1枚。
サクッ、と小気味よい音がして、ふわりとジャムの香りが広がる。
程よい甘さと、ジャムの酸味がすごく美味しい。
「美味しい。」
「……ふふ、本当に美味しそうに召し上がりますね。」
「……ええ、本当に。」
カイがくすくす笑い、カーティスも嬉しそうに笑った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
19 / 85