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「わぁぁ……綺麗……」
望遠鏡を覗き込み、感嘆の声を上げる。
東の塔からは、望遠鏡がなくてもある程度の星は見られるけれど、やっぱりあった方がいい。
でも、この望遠鏡は、エリックがお母様からプレゼントされたもののはずだ。
出してきて、よかったんだろうか。
「……気に入ったか?」
「はいっ、とても……でもわざわざ望遠鏡まで……よろしかったのですか?」
「ああ。気に入ったなら、使うといい。俺がいない日でも、自由に見たらいい。」
「えっ?!」
そんなこと、できない。
これは、エリックの宝物なんだ。
お母様からの最後の、誕生日プレゼントなんだから。
「そんな……できません……」
「なぜだ?」
「……エリック様の、ものですし…」
宝物だって、知ってて、使えない。
「ふっ……それはな、母から貰ったものなんだ。」
知ってる。
「誕生日にな。けれど、次の年の俺の誕生日を迎えることなく、母は死んだ。」
うん、知ってるよ。
「ずっとしまってあったが、きっと使った方がいい。使わせるなら、お前がいいと、そう思ったんだ。」
前にも、同じこと言ってくれた。
でも、ねえ、エリック。
前は泣いてたのに、今は泣かないの?
辛いんじゃない?
やっぱり、ルナじゃ、だめ?
「……エリック様…」
「お前なら、大切に使ってくれるだろう?」
微笑むエリックを見たら、胸がぎゅうっと締め付けられた。
ねえ、エリック、無理しないで。
俺に、泣いてもいいって言ってくれたの、エリックだよ。
エリックだって、泣いていいのに。
俺が全部、ぜんぶ、受け止めるのに。
「……母が死んだ戦争でついたのが、この前お前が見た傷だ。」
なんで笑うの。
無理しないでよ、俺の前では。
「……ははっ、そんな顔をするな。お前が気に病むことではない。」
「でもっ……」
「本当は、話すつもりなどなかったんだがな。不思議だ。お前には、話せてしまうよ。」
「っ、エリック様……っ…お辛いのなら……無理、しないで……」
我慢できずに、手を伸ばした。
エリックは驚いた顔をしたが、振り払わなかった。
頬を撫でると、そっと目を瞑る。
「本当に、お前は不思議だ。お前といると……我慢ができない。つい、甘えてしまうよ。」
「……俺で…俺なんかでいいなら、いつでも……」
「……少しだけ、抱きしめてもいいか?」
「はい。」
ぎゅっと抱き寄せられて、俺の肩にエリックの顔が埋められる。
泣いてる。
わかる。エリックがこうするときは、泣くときだ。
そっと抱きしめ返すと、エリックの肩が震える。
ねえ、エリック。
ルナのままだっていい。
だから、無理しないで。
俺には、甘えてよ。
辛い時は、俺を頼ってよ。
アリエルでも、ルナでも、なんでもいいんだ。
『俺』を、頼ってよ。
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