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「ディラン……」
「はい、どうなさいました?」
「エリックが、戻るまで、東の塔にいたい……」
アデルバートが帰って、エリックがどうしても公務に行かなければならなくなって、俺はディランとサンディーと一緒にいた。
それでもなんとなく心細くて、俺は東の塔で星を見たくなった。
「かしこまりました、参りましょう。」
ディランに支えてもらって、東の塔に向かう。
望遠鏡を準備してくれて、隣に座ってくれた。
「アリエル様、失礼致します。ディラン、少しだけいいか?」
そこにカーティスがやってきた。
「カーティス、あともう少し待ってくれないか?」
「そうしたいんだが、急用でな……」
「おれ、少しなら平気だよ……?」
「本当ですか?嘘はいけませんよ?」
「サンディーがいるし……少しだけ、なら。」
「……わかりました、すぐに戻ります。」
ディランはそう言うと、心配そうに何度も振り返りながら、塔を出ていった。
サンディーを撫でながら、星を眺めていると心は落ち着いていた。
ディランはすぐ戻るし、大丈夫。
「まだそうやっていられるのね。」
「っ!」
ヒュ、と息が詰まる。
今まで、ヴァネッサが直接コンタクトを取ってくることは少なかった。
急に、どうして。
「……あら、その望遠鏡、また使わせてもらえてるの?」
「……お前には、関係ない…」
「クスクス、皆の記憶が戻って、随分強気じゃない?」
威嚇するサンディーを宥めるように撫でる。
ヴァネッサが近づいてきて、心臓がどくどく跳ねる。
「あなたごときに、皆がそんなに心を許すなんて……」
憎々しげにそう言い、望遠鏡を撫でるヴァネッサに、嫌な予感がする。
「それに、触らないで……」
「あら、私に命令?随分ね。」
「それ、は……俺のものじゃ、ないから。」
「……まあ、そうね。確かに、あなたのものじゃないわね。」
そう言って微笑むヴァネッサ。
あっ、と思った時にはもう遅く。
ガッシャーン!
と、盛大な音を立て、望遠鏡が倒れた。
「あら、ごめんなさい、手が滑ったわ。」
「っ、どうしよう!エリックの大切なものなのにっ……」
慌ててなおそうとするも、ヴァネッサはそれを蹴り飛ばし、壁に望遠鏡が当たった。
「アゥゥ!」
サンディーが威嚇して吠える。
「こら、ダメ、サンディー……」
それを宥め、望遠鏡を拾いに行く。
しかしレンズは割れて、ボディは凹んでしまっている。
もともと繊細なものだ、そうなるに決まっていた。
「何事だ?」
聞こえてきた声に、体が冷えていく。
「どうした?アリエル、ルナ。」
「ものすごい音が聞こえましたが、お怪我は?」
エリックに、カイ、それにディランも戻ってきていた。
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