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毎日が、幸せすぎて忘れていた。
エリックの記憶はまだ、戻っていないんだってこと。
*
「ふんふんふふーん……」
みんなの記憶が戻ったきて、城で過ごせる場所が増えた。
サンディーと一緒にメイド室に行ったり、カーティスと話したり。
部屋にいてもディランと話して、たまにエリックが来てくれて、本当に幸せな毎日。
つい鼻歌を歌ってしまうくらいに、幸せだ。
「アリエル様、楽しそうでございますね。」
「……えへへ…ごめんね、うるさくて。」
「いえ!幸せそうでなによりでございます。」
ディランがそう言ってにっこり笑う。
サンディーも俺によってきて、しっぽを振った。
「あ、ねえディラン。」
「はい、なんでしょう。」
「エリックのところに行ったら、迷惑かなぁ?」
いつでも部屋に来たらいい、と言ってくれているエリックだけど、俺はまだ自分から行ったことがない。
「今日のご公務はもう終わっていますし、問題ないと思いますよ。」
「ふふ、この花綺麗でしょう!エリックにも見せたいなぁって……」
さっき街の花屋さんがくれた花束。
花瓶にいける前に、エリックにも見せて、お話したい。
「良いと思いますよ。」
「じゃあ、行ってみようかな……初めて行くけど……」
「きっと大丈夫でございますよ。最近のエリック様は、アリエル様をとても愛してらっしゃいます。」
ディランの言う通り、記憶が無くても、エリックからの愛はすごく感じられている。
だから、大丈夫かな。
「うん、行ってくる!」
「はい。私も参りましょうか?」
「ううん、すぐ戻るから、1人で大丈夫だよ。」
「かしこまりました。お待ちしております。」
「サンディーもここで待っててね。」
サンディーの頭をなでなですると、サンディーは大人しくディランの隣におすわりした。
「ふふ、本当にお利口な犬ですね。」
「うん。俺の事よく分かってくれてるみたい。じゃあ、行ってくるね。」
「はい。」
花束を持って、ウキウキした気持ちで部屋を出る。
エリックはどんな反応をしてくれるかな。
綺麗って言ってくれるかな。
少しお花の話ができたらいいな。
また、東の塔に花束を飾れたりしないかな。
そんなことを考えながら歩いて、エリックの部屋の前。
いつもは外にカイがいるのに、今日はカイがいなくて、扉は少し開いていた。
変だな、と思いながら、ノックだけして、開けた。
「エリック様っ………」
「キャァ!」
俺の声を聞いて悲鳴をあげたのは、ヴァネッサだった。
乱れた衣服と、ヴァネッサを抱きしめるエリック。
頭が真っ白になった。
そう、そうだよ。
エリックは、まだ、俺を思い出したわけじゃない。
なにを、期待してたんだろう。
でも、期待してた分だけ、幸せだった分だけ、落ちた時の衝撃も大きかった。
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