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「エリック様、最近私に冷たいではありませんか。」
夜、公務を終えた俺の元にアリエルがやってきた。
甘えるような声を出されても、不思議と何も感じなかった。
先日の一件で、アリエルへの信用が落ちているせいかもしれない。
ルナへの態度は、目に余るものがある。
いくらルナが気に入らなくても、ルナを陥れるようなことを言っているのはいただけない。
「アリエル、疲れているんだ。明日にしてくれ。」
「エリック様……側室の所へは足繁く通っているそうですね。」
それは俺が、ルナに会いたいからだ。
ルナと共にいると疲れが癒える。
ルナは自分の話はあまりしないが、人の話を聞くのはとても上手い。
共に過ごすのは気が楽で、落ち着く。
それに、国民に襲われたばかりで少し不安定なのも気にかかるし、自ら甘えてこないのだから、俺が出向いてやった方がいいに決まっている。
「俺の側室なのだ。問題ないだろう。」
「正妻の私よりも、共に過ごしておられるではありませんか。私だって、エリック様と…」
アリエルと過ごす時間は、ルナを愛しく思うにつれて減っていた。
なぜか、と言われれば、簡単な理由なのだ。
アリエルよりも、ルナと過ごしたい。
「では明日はお前と過ごそう。今日はもうよいか?」
「そんな、エリック様……」
ピタリと体を寄せられて、甘えられる。
「今はそんな気分じゃない。」
そう言って押し返そうとしたが、ソファに倒されてしまった。
鬱陶しく思って、突き放そうとする。
しかし、体が動かない。
アリエル、と声をかけようとして、声も出ないことに気がついた。
一体、何がどうなっているんだ。
「ふふ、エリック様……私も愛してくださいませ。」
服を脱ぎはじめるアリエル。
やめさせたくても、何も出来なかった。
それどころか、腕が勝手にアリエルの腰に回る。
コンコン
と、軽いノック。
「エリック様っ………」
「キャァ!」
アリエルが悲鳴をあげる。
首が勝手に動いた。
振り返って、俺の目に入ったのは、幸せそうに笑っていたルナの顔が、悲しげに歪んだところ。
そして、ルナが手に持っていた美しい花束が、パサリ、と床に落ちた。
ルナ、と声を出そうにも、やはり声は出ない。
表情も変えられない。
今にも泣きそうなルナに、なにかしてやりたくても、今、俺の体は俺のものではなかった。
「エリック様……」
俺は、今、どんな顔をしている?
ルナの顔を歪ませ、そんな悲しそうな声を出させるほど、ひどい顔か?
「……っ……やっぱり全部、嘘なの……?」
愛していると、甘言を囁いたことも
お前を抱き、愛しんだことも
お前が大切だと言ったことも
全て、すべて本心なのに。
「ねぇ……エリック……」
ルナの瞳に、涙が満ちる。
「もう、戻れないんだね……」
ルナが何を言っているのか、わからない。
ただ、今すぐ抱きしめて、すべて本心だと、そう伝えなければならないのはわかる。
だが、そうできない。
もどかしい。この気持ちを、ルナに伝えられない。
「……エリック……俺、ずっと愛してた。貴方だけを、愛してた、のに……」
ポタリと落ちた雫は、黒い塊を生み出した。
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