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「ディラン!」
「カイ執事長?そんなに慌てて、どうされたのです?」
「アリエル様は?アリエル様はどこに?」
アリエル様のお部屋で、サンディーと待っていたとき。
カイ執事長が慌てて飛び込んできた。
「一刻も早く、アリエル様にお伝えしなければならないことがあるのです。」
「アリエル様なら、エリック様に会いに行かれましたが……」
「なんと……!しまった、急がなければ!」
さらに慌てるカイ執事長。
只事ではないとわかり、俺もついていく。
「一体何が、どうしたのです?」
「……魔女の本当の目的は、アリエル様だったのです。」
「……どういうことでしょう?」
急ぎ足でエリック様の部屋を目指しながら、カイ執事長が話す。
「なにか呪いを解くいい方法はないかと、古い文献を見ていたのですが、そこにある言い伝えが載っていました。」
「言い伝え……」
「人魚姫の子孫のうち、特別な力を持って生まれた子、その力を使いし時、国を滅ぼしたり。」
「……特別な、力。」
「ええ。アリエル様に間違いありません。魔女は、アリエル様の力を、使いたいのです。そしてこの国を滅ぼし、乗っ取る気でしょう。」
「しかし、アリエル様の力は涙で……国を滅ぼすようなものでは……」
「……アリエル様の涙は、アリエル様の感情…それも強い感情に左右され、その力を発揮します。アリエル様が今まで感じたことの無い感情で、強い感情。そして今の現状を照らし合わせると、1つ、あるのです。」
「…それは、一体…?」
「アリエル様は皆から愛されて生きてきました。それはあのお方の人望ゆえです。しかしそれを奪い、アリエル様を1人にし、そしてもう元には戻ることが出来ないとアリエル様が思ったとき、その感情は生まれるでしょう。」
愛を、希望を、光を失った人がたどり着く感情は。
「……まさか。」
「……ええ、絶望です。とにかく、急ぎましょう。」
エリック様の部屋の前。
佇むアリエル様と、その足元に落ちた花束。
それが、我々が遅かったということを、物語っていた。
「アリエル様!!」
「ふっふっふっ……あーはっはっは!もう遅いわ!!」
カイ執事長の呼ぶ声と、高らかに笑う魔女の声。
アリエル様の足元に、黒い塊が現れていた。
「アリエル様っ!!」
「無駄よ、もう聞こえていないわ。」
本来の姿に戻った魔女。
海の魔女が持つという触手が生え、青紫色の肌に変わる。
触手がアリエル様を掴んだ。
「アリエル様を離せ!」
「すべて無駄よ。もうこの子は止まらないわ。」
魔女はそう言うと、宙でアリエル様を離した。
その瞬間、黒い暴風が吹き荒れた。
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