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「っぐ、なんだ?!」
「うぁっ!」
あまりの勢いに目を瞑る。
次に視界が開けた時には、アリエル様の姿はなく、黒い巨大な塊から、漆黒の茨が伸びていた。
「なっ、どういうことだ?!」
「お前達は惜しいところまで分かっていたようだな。だが、そこの腑抜けな王のために教えてやろう。」
魔女は杖でエリック様を指し示した。
「アリエルに何をした。」
「っ、エリック様、記憶が……?!」
「……ああ。全てな。」
「あーはっはっ!間抜けだなぁ!」
魔女は笑い、エリック様をじっと見据える。
「遅すぎたんだよ。アリエルは健気に待っていたのにねぇ。」
「すべてお前の呪いだろう!」
「お前達は何も分かっちゃいない。」
俺の言葉に、魔女はニヤリとほくそ笑んだ。
「これは、アリエルの意思だ。」
黒い塊を指し、魔女がそう言う。
「アリエルはお前にもう一度、愛されたかっただけなのにねぇ。お前はそれを裏切った。愛していると囁いておきながら、私を抱こうとしていた。」
「お前が俺の体の自由を奪ったのか。」
「ふふふ、あはははは!!そうよ、その通り。でも、アリエルにはそうは見えない。あの子には、あなたが裏切ったように見えたのよ。あの子は絶望したの。あなたの愛が、もう手に入らないと、そう思ってね。」
茨はうねり、さらに数を増していく。
「さぁ、アリエル。あなたを裏切った人たちよ。」
魔女が黒い塊に向かってそう囁く。
次の瞬間、茨が勢いよく伸び、俺たちを刺さんと床に突き刺さった。
「そう、そうよ。すべて破壊するの!壊してしまいなさい!あーはっはっは!」
次から次に襲いくる茨を避けるので精一杯。
アリエル様に語りかけることすらできない。
そもそも、アリエル様は?
あの塊の中にいるのだろうか?
無事なのか?
それすらも分からない。
「やっておしまい!!」
茨が、エリック様めがけて真っ直ぐに伸びる。
「エリック様!!!」
「ワンっ!」
カイ執事長の叫びのすぐ後、エリック様の前にサンディーが滑り込んだ。
勢いよく伸びていた茨は、サンディーの目の前で止まった。
「……お前…俺を、かばってくれるのか。」
「ワン、ワン!!」
エリック様の前から、サンディーは動こうとしない。
「ええい、何を躊躇う?!アリエル!あれはお前を裏切ったのだ!!」
怒鳴る魔女だが、茨は動かない。
サンディーが、茨に擦り寄ろうとする。
茨はその度にうねうねと動き、サンディーが茨に触れないようにしている。
「アリエル様の、意思が残っている。」
「……そのようですね。アリエル様を、元に戻すには、我々がアリエル様に話しかけるしかないのでは。」
「……ええ、ディラン。アリエル様は皆から愛されていると、わかって頂ければ。」
俺とカイ執事長は、目を見合わせて頷いた。
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