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「アリエル、躊躇うことなどない。全て壊してしまえば苦しくなくなるわ!」
魔女の声に、茨は再び攻撃的な動きをし始める。
城の窓を突き破り、壁を傷つけ、破壊した。
「サンディーでもダメか……」
地面に伏せ、私とディランは顔を見合わせた。
その時だった。
『アリエル様ー!』
街から、声が聞こえる。
『アリエル様!アリエル様ー!!』
「……国民の、声だ。」
「そうか!エリック様の記憶が戻ったから……国民達も記憶を取り戻しているのです!」
バキバキと音を立て、壁を破壊する茨を避けながら、私とディランはあることを思いついた。
「……ディラン、ここは任せました。」
「はい、カイ執事長。どんなときも、アリエル様に付き従うと、そう決めております。私は、その信念を貫きます。」
ディランに頷き、魔女の隙を見て走る。
城の門番に門を開けさせ、下に降りた。
「皆、聞いてください!!アリエル様は、決して意思を失ってはいません!」
国民に向かい、大声をはりあげた。
「呼びかけ続けて!アリエル様を、呼んでください!城の庭からの方が近い!皆、アリエル様を呼んでください!!」
「……小癪な真似をしてくれる!!」
「っ、しまった…!」
背後に魔女が迫る。
国民たちを危険に晒せない、と動けずにいた私の前に、キィン、と甲高い音を立てる、杖が1つ。
「お前さんの相手は、わしじゃ。」
仕立て屋の老父が、静かにそう言った。
「……皆、今のうちに!」
そこを任せ、国民たちを誘導した。
「アリエル様!!」
「アリエル様ー!!」
皆が熱心に声を飛ばす。
しかし茨は城を破壊し、街にまで伸びてきた。
「……やはり、伝わらないのか…?」
「手遅れだったのかしら……」
不安が国民たちに過ぎる。
「そんなことねえ!!アリエルは……アリエルは…」
ギリッ、と歯を噛み締めたアデルバート様。
「……そうです。アリエル様に伝わらないはずがありません。我々が諦めてはいけません!我々が魔女に屈してはならない!」
隣に並び、国民たちを鼓舞する。
「……そうだ。俺達がアリエル様を信じないと。」
「…そうね!」
再び気持ちが一丸となった国民達は、声を張り上げる。
呼びかけ続けて、その間にも襲ってくる茨を避け、それでもなお、やめなかった。
気がつけば空が明るくなり、城も街も、ボロボロになっていた。
それでも、やっぱり。
「アリエル様!!」
「アリエルー!!」
声が止むことは、なかった。
そしてある時。
ピタリと動きが止まった茨は、ゆっくりとその姿を消していった。
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